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東京地方裁判所 昭和61年(行ウ)26号 判決

原告 ネドロイド株式会社

右代表者代表取締役 エイチ・ケイ・ヴァン・デア・シャッテ・オリヴィエ

全事件右訴訟代理人弁護士 松本啓二

同 石黒徹

甲、乙、丙事件右訴訟代理人弁護士 濱田邦夫

同 齋藤文彦

同 中本攻

同 木村庸五

同 山本隆司

甲、乙、丙事件右訴訟復代理人・丁事件右訴訟代理人弁護士 内藤加代子

甲、乙、丙事件右訴訟復代理人弁護士 一木剛太郎

被告 麹町税務署長 佐藤清和

右指定代理人 合田かつ子 外三名

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  甲事件

(一) 被告が、原告の昭和四九年一〇月一日から昭和五〇年九月三〇日までの事業年度(以下「昭和五〇年九月期」という。)の法人税について昭和五一年九月二九日付けで更正(ただし、昭和五一年一一月二七日付けの再更正により減額された後の部分)のうち、所得金額を一億一六七八万四九四五円として計算した額を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし、昭和五一年一一月二七日付けの再賦課決定により減額された後の部分)を取り消す。

(二) 訴訟費用は、被告の負担とする。

2  乙事件

(一) 被告が、原告の昭和五〇年一〇月一日から昭和五一年九月三〇日までの事業年度(以下「昭和五一年九月期」という。)の法人税について昭和五四年一一月二六日付けでした更正のうち、所得金額を二二六九万三四二九円の欠損金として計算した額を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。

(二) 被告が、原告の昭和五一年一〇月一日から昭和五二年九月三〇日までの事業年度(以下「昭和五二年九月期」という。)の法人税について昭和五四年一二月二六日付けでした更正のうち、所得金額を四五二九万六二四九円の欠損金として計算した額を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。

(三) 被告が、原告の昭和五二年一〇月一日から昭和五三年九月三〇日までの事業年度(以下「昭和五三年九月期」という。)の法人税について昭和五四年一二月二六日付けでした更正のうち、所得金額を三九〇四万三四八七円の欠損金として計算した額を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。

(四) 訴訟費用は、被告の負担とする。

3  丙事件

(一) 被告が、原告の昭和五三年一〇月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下「昭和五三年一二月期」という。)の法人税について昭和五七年三月二五日付けでした更正のうち、所得金額を三六六六万九八一七円の欠損金として計算した額を超える部分を取り消す。

(二) 被告が、原告の昭和五四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下「昭和五四年一二月期」という。)の法人税について昭和五七年三月三一日付けでした更正のうち、所得金額を一億一二二一万七〇六六円の欠損金として計算した額を超える部分を取り消す。

(三) 被告が、原告の昭和五五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下「昭和五五年一二月期」という。)の法人税について昭和五七年三月三一日付けでした更正のうち、所得金額を〇円として計算した額を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。

(四) 訴訟費用は、被告の負担とする。

4  丁事件

(一) 被告が、原告の昭和五六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下「昭和五六年一二月期」という。)の法人税について昭和五九年七月三一日付けでした更正のうち、所得金額を六〇六万八五三七円として計算した額を超える部分及び過少申告加算税賦課決定のうち、過少申告加算税六万九一〇〇円を超える部分を取り消す。

(二) 被告が、原告の昭和五七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下「昭和五七年一二月期」という。)の法人税について昭和五九年七月三一日付けでした更正のうち、所得金額を一億四四九五万六四三六円の欠損金として計算した額を超える部分を取り消す。

(三) 被告が、原告の昭和五八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下「昭和五八年一二月期」という。)の法人税について昭和五九年七月三一日付けでした更正のうち、所得金額を二億六一六四万八三〇九円の欠損金として計算した額を超える部分を取り消す。

(四) 訴訟費用は、被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告及び本件船会社等

(一) 原告は、国際間の船舶運航事業を営むオランダ王国(以下「オランダ」という。)の法人コニンクライケ・ジャバ・チャイナー・パケットファート・ライネン・ビー・ヴィー・アムステルダム(ローヤル・インターオーシャン・ラインズ)(以下「ローヤル・インターオーシャン社」という。)の日本支店を分離独立させて、昭和四八年五月八日に設立された国際間の海運代理店業を営む株式会社であり、当初の商号は、ローヤル・インターオーシャン・ラインズ株式会社であったが、昭和五二年五月一八日にネドロイド株式会社と変更した。

(二) 原告の株式は、当初その全部をローヤル・インターオーシャン社の子会社である香港法人アール・アイ・エル・ホールディングズ・(ファー・イースト)・リミテッドが保有していたが、昭和五〇年五月一九日に全株式がローヤル・インターオーシャン社に譲渡され、その後、昭和六〇年一月に全株式がローヤル・インターオーシャン社(同社の商号は、昭和五二年七月二二日にケージェーシーピーエル・ライネン・ビー・ヴィーと変更された。)の親会社であるネドロイド・ライネン・ビー・ヴィー(以下「ネドロイド社」という。)のさらに親会社であるコニンクライケ・ネドロイド・グループ・エヌ・ヴィーに譲渡された。

(三) 原告は、設立当初から、ローヤル・インターオーシャン社と海運代理店契約を締結し、同社の海運代理店として、日本国内において、同社のためにその事業に属する取引の代理を継続的に行っていたが、昭和五二年五月にネドロイド社がローヤル・インターオーシャン社からその船舶事業を引き継いだことに伴い、同月以降、ネドロイド社との間で、右同様の海運代理店関係を有するに至っている(以下、昭和四八年五月八日から昭和五二年五月までの間の関係ではローヤル・インターオーシャン社を、同月以降の関係ではネドロイド社を「本件船会社」という。)。

(四) 原告の事業年度は、設立当初は毎年一〇月一日から翌年九月三〇日までであったが、昭和五三年一〇月一日から同年一二月三一日までの昭和五三年一二月期を経て、昭和五四年以降、毎年一月一日から同年一二月三一日までに変更された。

2  本件の各更正等及び不服申立ての経緯

(一) 甲事件(昭和五〇年九月期)

原告の昭和五〇年九月期の法人税について、原告が青色の申告書でした確定申告、被告がした更正及び過少申告加算税賦課決定並びに再更正及び過少申告加算税再賦課決定(以下、右再更正により一部取り消された後の右更正を「昭和五〇年九月期更正」と、右過少申告加算税再賦課決定により一部取り消された後の右過少申告加算税賦課決定を「昭和五〇年九月期賦課決定」という。)、原告がした審査請求及びこれに対する裁決の経緯は、別表一の一のとおりである。

(二) 乙事件

(1)  昭和五一年九月期

原告の昭和五一年九月期の法人税について、原告が青色の申告書でした確定申告、被告がした更正(以下「昭和五一年九月期更正」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「昭和五一年九月期賦課決定」という。)、原告がした審査請求及びこれに対する裁決の経緯は、別表一の二のとおりである。

(2)  昭和五二年九月期

原告の昭和五二年九月期の法人税について、原告が青色の申告書でした確定申告、被告がした更正(以下「昭和五二年九月期更正」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「昭和五二年九月期賦課決定」という。)、原告がした審査請求及びこれに対する裁決の経緯は、別表一の三のとおりである。

(3)  昭和五三年九月期

原告の昭和五三年九月期の法人税について、原告が青色の申告書でした確定申告、被告がした更正(以下「昭和五三年九月期更正」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「昭和五三年九月期賦課決定」という。)、原告がした審査請求及びこれに対する裁決の経緯は、別表一の四のとおりである。

(三) 丙事件

(1)  昭和五三年一二月期

原告の昭和五三年一二月期の法人税について、原告が青色の申告書でした確定申告、被告がした更正(以下「昭和五三年一二月期更正」という。)、原告がした審査請求の経緯は、別表一の五のとおりであり、丙事件の訴えを提起した昭和五八年三月一八日当時、右審査請求に対する裁決がなかった。

(2)  昭和五四年一二月期

原告の昭和五四年一二月期の法人税について、原告が青色の申告書でした確定申告、被告がした更正(以下「昭和五四年一二月期更正」という。)、原告がした審査請求の経緯は、別表一の六のとおりであり、丙事件の訴えを提起した昭和五八年三月一八日当時、右審査請求に対する裁決がなかった。

(3)  昭和五五年一二月期

原告の昭和五五年一二月期の法人税について、原告が青色の申告書でした確定申告、被告がした更正(以下「昭和五五年一二月期更正」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「昭和五五年一二月期賦課決定」という。)、原告がした審査請求の経緯は、別表一の七のとおりであり、丙事件の訴えを提起した昭和五八年三月一八日当時、右審査請求に対する裁決がなかった。

(四) 丁事件

(1)  昭和五六年一二月期

原告の昭和五六年一二月期の法人税について、原告が青色の申告書でした確定申告、被告がした更正(以下「昭和五六年一二月期更正」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「昭和五六年一二月期賦課決定」という。)、原告がした審査請求及びこれに対する裁決の経緯は、別表一の八のとおりである。

(2)  昭和五七年一二月期

原告の昭和五七年一二月期の法人税について、原告が青色の申告書でした確定申告、被告がした更正(以下「昭和五七年一二月期更正」という。)、原告がした審査請求及びこれに対する裁決の経緯は、別表一の九のとおりである。

(3)  昭和五八年一二月期

原告の昭和五八年一二月期の法人税について、原告が青色の申告書でした確定申告、被告がした更正(以下「昭和五八年一二月期更正」という。)、原告がした審査請求及びこれに対する裁決の経緯は、別表一の一〇のとおりである。

3  不服の範囲

原告は、昭和五〇年九月期更正のうち、所得金額を一億一六七八万四九四五円として計算した額を超える部分及び昭和五〇年九月期賦課決定、昭和五一年九月期更正のうち、所得金額を二二六九万三四二九円の欠損金として計算した額を超える部分及び昭和五一年九月期賦課決定、昭和五二年九月期更正のうち、所得金額を四五二九万六二四九円の欠損金として計算した額を超える部分及び昭和五二年九月期賦課決定、昭和五三年九月期更正のうち、所得金額を三九〇四万三四八七円の欠損金として計算した額を超える部分及び昭和五三年九月期賦課決定、昭和五三年一二月期更正のうち、所得金額を三六六六万九八一七円の欠損金として計算した額を超える部分、昭和五四年一二月期更正のうち、所得金額を一億一二二一万七〇六六円の欠損金として計算した額を超える部分、昭和五五年一二月期更正のうち、所得金額を〇円として計算した額を超える部分及び昭和五五年一二月期賦課決定、昭和五六年一二月期更正のうち、所得金額を六〇六万八五三七円として計算した額を超える部分及び昭和五六年一二月期賦課決定のうち、過少申告加算税六万九一〇〇円を超える部分、昭和五七年一二月期更正のうち、所得金額を一億四四九五万六四三六円の欠損金として計算した額を超える部分、昭和五八年一二月期更正のうち、所得金額を二億六一六四万八三〇九円の欠損金として計算した額を超える部分について、それぞれ不服であるから、その取消しを求める。

二  請求の原因に対する認否

請求の原因1及び2は認める。

三  抗弁

1  所得金額及び計算根拠

(一) 昭和五〇年九月期

(1)  所得及びその計算根拠

原告の昭和五〇年九月期の法人税に係る所得金額及びその計算根拠は別表二の一のとおりである。

(2)  雑収入計上漏れの加算について

原告は、昭和五〇年九月期に、その支出した交際費の金額のうち、次のア及びイの合計額五一四九万六五七三円を、シートレーン社又は本件船会社に負担させたが、右交際費は原告自ら業務に関連して支出されたものであって、税法上原告の支出に帰するのを相当とする交際費(以下「原告の支出に帰すべき交際費(もの)」、「原告に帰属すべき交際費(もの)」などという。)であり、これをシートレーン社及び本件船会社が負担したことは、結局において、原告に対し経費補助をしたことに相当するので、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算したものである。

ア シートレーン社に対する海運代理店業務に関連し、接待、供応のために支出した金額 二五五万五八六九円

イ 本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた金額で、後記2のとおり、原告に帰属すべき交際費と認められる金額 四八九四万〇七〇四円

(3)  交際費等の損害不算入額の加算について

原告が昭和五〇年九月期に支出した租税特別措置法(以下「措置法」という。)六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額は、原告の申告に係る九一四万五六〇九円に、右(2) のア及びイの合計額五一四九万六五七三円及び原告が会費として損金に算入した金額のうち社交クラブ会費及びゴルフ会費等として支出した金額二四万〇八〇〇円を加算した六〇八八万二九八二円である。

原告について、右交際費等の額六〇八八万二九八二円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五〇年法律第一六号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は四四〇一万三六四五円であるから、右金額を所得金額に加算したものである。

(4)  交際費等の認容額の減算について

右(2) の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(3) による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額五一四九万六五七三円を所得金額から減算したものである。

(二) 昭和五一年九月期

(1)  所得及びその計算根拠

原告の昭和五一年九月期の法人税に係る所得金額及びその計算根拠は別表二の二のとおりである。

(2)  雑収入計上漏れの加算について

原告は、昭和五一年九月期に、その支出した交際費の金額のうち六三六一万一〇〇二円について、本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして、右金額を本件船会社に負担させたが、右交際費は、後記2のとおり、原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告に帰属すべきものであり、これを本件船会社が負担したことは、結局において、原告に対し経費補助をしたことに相当するので、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算したものである。

(3)  交際費等の損金不算入額の加算について

原告が昭和五一年九月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額は、原告の申告に係る九一一万八四一五円に、(2) の六三六一万一〇〇二円を加算した七二七二万九四一七円である。

原告について、右交際費等の額七二七二万九四一七円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五一年法律第五号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は五三六七万二六三四円であるから、右金額を所得金額に加算したものである。

(4)  交際費等の認容額の減算について

右(2) の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(3) による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額六三六一万一〇〇二円を所得金額から減算したものである。

(5)  寄付金の過大損金不算入額の減算について

原告の申告に係る寄付金の損金不算入額が、別表三の一のとおり、その計算の基礎となる所得金額の増加に伴い四一万七九八八円過大となるので、右金額を金額所得から減算したものである。

(三) 昭和五二年九月期

(1)  所得及びその計算根拠

原告の昭和五二年九月期の法人税に係る所得金額及びその計算根拠は別表二の三のとおりである。

(2)  雑収入計上漏れの加算について

原告は、昭和五二年九月期に、その支出した交際費の金額のうち六三七八万三三一四円について、本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして、右金額を本件船会社に負担させたが、右交際費は、後記2のとおり、原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告に帰属すべきものであり、これを本件船会社が負担したことは、結局において、原告に対し経費補助をしたことに相当するので、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算したものである。

(3)  交際費等の損金不算入額の加算について

原告が昭和五二年九月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額は、原告の申告に係る九六三万四八三〇円に、(2) の六三七八万三三一四円を加算した七三四一万八一四四円である。

原告について、右交際費等の額七三四一万八一四四円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五二年法律第九号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は五五四九万四五一五円であるから、右金額から申告に係る損金不算入額四四七万九九六二円を差し引いた五一〇一万四五五三円を所得金額に加算したものである。

(4)  交際費等の認容額の減算について

右(2) の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(3) による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額六三七八万三三一四円を所得金額から減算したものである。

(5)  寄付金の過大損金不算入額の減算について

原告の申告に係る寄付金の損金不算入額が、別表三の二のとおり、その計算の基礎となる所得金額の増加に伴い八五七四円過大となるので、右金額を所得金額から減算したものである。

(6)  事業税の損金算入額の減算について

昭和五一年九月期更正の後の原告の昭和五一年九月期の所得金額に対する事業税の額四〇八万七九二〇円を、損金として昭和五二年九月期の所得金額から減算したものである。

(四) 昭和五三年九月期

(1)  所得及びその計算根拠

原告の昭和五三年九月期の法人税に係る所得金額及びその計算根拠は別表二の四のとおりである。

(2)  雑収入計上漏れの加算について

原告は、昭和五三年九月期に、その支出した交際費の金額のうち五八五七万一一二〇円について、本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして、右金額を本件船会社に負担させたが、右交際費は、後記2のとおり、原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告に帰属すべきものであり、これを本件船会社が負担したことは、結局において、原告に対し経費補助をしたことに相当するので、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算したものである。

(3)  交際費等の損金不算入額の加算について

原告が昭和五三年九月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額は、原告の申告に係る一〇六六万四九六一円に、(2) の五八五七万一一二〇円を加算した六九二三万六〇八一円である。

原告について、右交際費等の額六九二三万六〇八一円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五四年法律第一五号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は五一八七万四六六五円であるから、右金額から申告に係る損金不算入額五七二万六二二五円を差し引いた四六一四万八四四〇円を所得金額に加算したものである。

(4)  交際費等の認容額の減算について

右(2) の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(3) による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額五八五七万一一二〇円を所得金額から減算したものである。

(5)  寄付金の過大損金不算入額の減算について

原告の申告に係る寄付金の損金不算入額が、別表三の三のとおり、その計算の基礎となる所得金額の増加に伴い七万七七〇八円過大となるので、右金額を所得金額から減算したものである。

(6)  事業税の損金算入額の減算について

昭和五二年九月期更正の後の原告の昭和五二年九月期の所得金額に対する事業税の額一九万四五二〇円を、損金として昭和五三年九月期の所得金額から減算したものである。

(五) 昭和五三年一二月期

(1)  所得及びその計算根拠

原告の昭和五三年一二月期の法人税に係る所得金額(欠損金額)及びその計算根拠は別表二の五のとおりである。

(2)  雑収入計上漏れの加算について

原告は、昭和五三年一二月期に、その支出した交際費の金額のうち二二二三万一九一六円について、本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして、右金額を本件船会社に負担させたが、右交際費は、後記2のとおり、原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告に帰属すべきものであり、これを本件船会社が負担したことは、結局において、原告に対し経費補助をしたことに相当するので、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算したものである。

(3)  交際費等の損金不算入額の加算について

原告が昭和五三年一二月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額は、原告の申告に係る四三五万九九八九円に、(2) の二二二三万一九一六円を加算した二六五九万一九〇五円である。

原告について、右交際費等の額二六五九万一九〇五円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五四年法律第一五号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は二三〇一万〇四二一円であるから、右金額から申告に係る損金不算入額三〇八万四七四三円を差し引いた一九九二万五六七八円を所得金額に加算したものである。

(4)  交際費等の認容額の減算について

右(2) の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(3) による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額二二二三万一九一六円を所得金額から減算したものである。

(5)  事業税の損金算入額の減算について

昭和五三年九月期更正の後の原告の昭和五三年九月期の所得金額に対する事業税の額八一万九八四〇円を、損金として昭和五三年一二月期の所得金額から減算したものである。

(六) 昭和五四年一二月期

(1)  所得及びその計算根拠

原告の昭和五四年一二月期の法人税に係る所得金額(欠損金額)及びその計算根拠は別表二の六のとおりである。

(2)  雑収入計上漏れの加算について

原告は、昭和五四年一二月期に、その支出した交際費の金額のうち五九二四万〇六六一円について、本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして、右金額を本件船会社に負担させたが、右交際費は、後記2のとおり、原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告に帰属すべきものであり、これを本件船会社が負担したことは、結局において、原告に対し経費補助をしたことに相当するので、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算したものである。

(3)  交際費等の損金不算入額の加算について

原告が昭和五四年一二月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額は、原告の申告に係る八二二万〇一六六円に、(2) の五九二四万〇六六一円を加算した六七四六万〇八二七円である。

原告について、右交際費等の額六七四六万〇八二七円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五四年法律第一五号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は四四五二万一〇三五円であるから、右金額を所得金額に加算したものである。

(4)  交際費等の認容額の減算について

右(2) の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(3) による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額五九二四万〇六六一円を所得金額から減算したものである。

(七) 昭和五五年一二月期

(1)  所得及びその計算根拠

原告の昭和五五年一二月期の法人税に係る所得金額及びその計算根拠は別表二の七のとおりである。

(2)  雑収入計上漏れの加算について

原告は、昭和五五年一二月期に、その支出した交際費の金額のうち六二二一万〇〇〇五円について、本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして、右金額を本件船会社に負担させたが、右交際費は、後記2のとおり、原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告に帰属すべきものであり、これを本件船会社が負担したことは、結局において、原告に対し経費補助をしたことに相当するので、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算したものである。

(3)  交際費等の損金不算入額の加算について

原告が昭和五五年一二月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額は、原告の申告に係る一三九六万七三三三円に、(2) の六二二一万〇〇〇五円を加算した七六一七万七三三八円である。

原告について、右交際費等の額七六一七万七三三八円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五六年法律第一三号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は六七二九万三九五一円であるから、右金額から申告に係る損金不算入額一一三〇万四二一五円を差し引いた五五九八万九七三六円を所得金額に加算したものである。

(4)  繰越欠損金の当期控除過大額の加算について

昭和五三年一二月期更正及び昭和五四年一二月期更正に伴い、原告の繰越欠損金額が減少したため、原告の申告に係る繰越欠損金の当期控除額が一〇五五万八〇八六円過大となったので、右金額を所得金額に加算したものである。

(5)  交際費等の認容額の減算について

右(2) の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(3) による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額六二二一万〇〇〇五円を所得金額から減算したものである。

(八) 昭和五六年一二月期

(1)  所得及びその計算根拠

原告の昭和五六年一二月期の法人税に係る所得金額及びその計算根拠は別表二の八のとおりである。

(2)  雑収入計上漏れの加算について

原告は、昭和五六年一二月期に、その支出した交際費の金額のうち、次のアないしウの合計額六四八七万六八四〇円について、本件船会社又は船舶運航事業を営むインドネシア国籍のピ-・ティー・トリコラロイド社(以下「トリコラロイド社」という。)に負担させたが、右交際費は原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告に帰属すべきものであり、これを本件船会社及びトリコラロイド社が負担したことは、結局において、原告に対し経費補助をしたことに相当するので、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算したものである。

ア 本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた金額で、後記2のとおり、原告に帰属すべき交際費と認められる金額 三八一二万八三五三円

イ 昭和五六年八月以降、原告が従前の経理処理を変更し、本件船会社から得た資金を本件船会社名義の非居住者自由円預金口座に入金して、原告の帳簿を通すことなく右口座から直接引き出す方法により支出した金額で、後記2のとおり、原告に帰属すべき交際費と認められる金額 二三四四万八四八七円

ウ トリコラロイド社との間で締結した昭和五六年二月一日付け協約書に基づき、同社に対する立替金の名目で支出した上、同社に対する預り運賃の一部で相殺する処理をして同社に負担させた金額で、原告に帰属すべき交際費と認められる金額 三三〇万〇〇〇円

(3)  交際費等の損金不算入額の加算について

原告が昭和五六年一二月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額は、原告の申告に係る二八〇三万〇八五六円に、(2) のアないしウの合計額六四八七万六八四〇円を加算した九二九〇万七六九六円である。

原告について、右交際費等の額九二九〇万七六九六円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五六年法律第一三号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は八三一〇万九〇七五円であるから、右金額を所得金額に加算したものである。

(4)  交際費等の認容額の減算について

右(2) の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(3) による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額六四八七万六八四〇円を所得金額から減算したものである。

(5)  寄付金の過大損金不算入額の減算について

原告の申告に係る寄付金の損金不算入額が、別表三の四のとおり、その計算の基礎となる所得金額の増加に伴い一五万〇七九九円過大となるので、右金額を所得金額から減算したものである。

(九) 昭和五七年一二月期

(1)  所得及びその計算根拠

原告の昭和五七年一二月期の法人税に係る所得金額(欠損金額)及びその計算根拠は別表二の九のとおりである。

(2)  雑収入計上漏れの加算について

原告は、昭和五七年一二月期に、その支出した交際費の金額のうち、次のアないしウの合計額六九三〇万五七一一円について、本件船会社又はトリコラロイド社に負担させたが、右交際費は原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告に帰属すべきものであり、これを本件船会社及びトリコラロイド社が負担したことは、結局において、原告に対し経費補助をしたことに相当するので、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算したものである。

ア 本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた金額で、後記2のとおり、原告に帰属すべき交際費と認められる金額 一〇万〇〇〇〇円

イ 本件船会社から得た資金を本件船会社名義の非居住者自由円預金口座に入金して、原告の帳簿を通すことなく右口座から直接引き出す方法により支出した金額で、後記2のとおり、原告に帰属すべき交際費と認められる金額 六五六〇万五七一一円

ウ トリコラロイド社との間で締結した昭和五六年二月一日付け協約書に基づき、同社に対する立替金の名目で支出した上、同社に対する預り運賃の一部で相殺する処理をして同社に負担させた金額で、原告に帰属すべき交際費と認められる金額 三六〇万〇〇〇〇円

(3)  交際費等の損金不算入額の加算について

原告が昭和五七年一二月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額は、原告の申告に係る一八八八万三六六四円に、(2) のアないしウの合計額六九三〇万五七一一円を加算した八八一八万九三七五円である。

原告について、右交際費等の額八八一八万九三七五円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は七三三二万三九四八円であるから、右金額から申告に係る損金不算入額六九六万二八二四円を差し引いた六六三六万一一二四円を所得金額に加算したものである。

(4)  交際費等の認容額の減算について

右(2) の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(3) による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額六九三〇万五七一一円を所得金額から減算したものである。

(5)  事業税の損金算入額の減算について

昭和五六年一二月更正の後の原告の昭和五六年一二月期の所得金額に対する事業税の額から原告の申告に係る事業税の額を控除した額として、九八〇万六〇四〇円を、損金として昭和五七年一二月期の所得金額から減算したものである。

なお、原告の昭和五六年一二月期の所得金額に対する標準税率による事業税の額は、一〇二八万七一二〇円であり、これから原告が昭和五六年一二月期分の申告所得金額に対する事業税の額として申告した三四万〇二〇〇円を差し引くと、九九四万六九二〇円となるから、被告のした右事業税の損金算入の計算は違算であって、損金算入額が一四万〇八八〇円不足していることになるが、原告が、昭和五九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下「昭和五九年一二月期」という。)の確定申告において、昭和五六年一二月期更正により増加した所得金額に対する事業税の額として、実際税率を適用して算出した一〇九一万六七四〇円を損金の額に算入するとともに、右被告主張の損金算入額九八〇万六〇四〇円を益金の額に算入して、右の一四万〇八八〇円の損金算入不足額を自ら損金算入した結果、右損金算入不足額は消滅したとともに、原告の昭和五七年一二月期以降昭和六〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下「昭和六〇年一二月期」という。)に至る各事業年度は多額の欠損金額が生じていて、いずれにせよ、法人税、加算税等が課されることはないから、結局、昭和五七年一二月期において被告のした右事業税の損金算入の処理はそのまま維持し得るものである。

(一〇) 昭和五八年一二月期

(1)  所得及びその計算根拠

原告の昭和五八年一二月期の法人税に係る所得金額(欠損金額)及びその計算根拠は別表二の一〇のとおりである。

(2)  雑収入計上漏れの加算について

原告は、昭和五八年一二月期に、その支出した交際費の金額のうち、次のアないしウの合計額六二五二万二三二六円について、本件船会社又はトリコラロイド社に負担させたが、右交際費は原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告に帰属すべきものであり、これを本件船会社及びトリコラロイド社が負担したことは、結局において、原告に対し経費補助をしたことに相当するので、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算したものである。

ア 本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた金額で、後記2のとおり、原告に帰属すべき交際費と認められる金額 三万三〇〇〇円

イ 本件船会社から得た資金を本件船会社名義の非居住者自由円預金口座に入金して、原告の帳簿を通すことなく右口座から直接引き出す方法により支出した金額で、後記2のとおり、原告に帰属すべき交際費と認められる金額 五六四八万九三二六円

ウ トリコラロイド社との間で締結した昭和五六年二月一日付け協約書に基づき、同社に対する立替金の名目で支出した上、同社に対する預り運賃の一部で相殺する処理をして同社に負担させた金額で、原告に帰属すべき交際費と認められる金額 六〇〇万〇〇〇〇円

(3)  交際費等の損金不算入額の加算について

原告が昭和五八年一二月期に支出した措置法六二条三項の交際費等の額は、原告の申告に係る一九六三万三三〇三円に、(2) のアないしウの合計額六二五二万二三二六円を加算した八二一五万五六二九円である。

原告について、右交際費等の額八二一五万五六二九円は、措置法六二条一項(ただし、昭和六〇年法律第七号による改正前のもの)により損金に算入されないから、右金額から申告に係る損金不算入額一九六三万三三〇三円を差し引いた六二五二万二三二六円を所得金額に加算したものである。

(4)  交際費等の認容額の減算について

右(2) の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(3) による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額六二五二万二三二六円を所得金額から減算したものである。

2  本件交際費の支出の主体について

右1の(一)の(2) のイ、(二)ないし、(七)の各(2) 及び(八)ないし(一〇)の各(2) のアの本件船会社に対する立替金の名目で支出し、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた金額並びに(八)ないし(一〇)の各(2) のイの本件船会社から得た資金を本件船会社名義の非居住者自由円預金口座に入金して、右口座から直接引き出す方法により支出して本件船会社に負担させた金額(以下、これらを併せて「本件交際費」という。)は、いずれも原告が実行した接待交際行為のために支出した費用でありながら、本件船会社の支出に帰すべき交際費であるとして、本件船会社の負担額を原告の収入に計上せず、また、原告の支出に帰すべき交際費等としての経理処理及び申告をしなかったものであるが、以下のとおり、本件交際費は、本件船会社に帰属すべき交際費ではなく、原告自身に帰属すべき交際費であることは明らかである。

(一) 原告の業務内容及び法的地位

(1)  原告は、国際間の海運代理店業務等を目的として設立され、設立以来、本件船会社の日本における海運代理店として、〈1〉入出港の手配、船用品の積込み、船舶修理の手配、運賃の受取り、船荷証券の発行等の船主関係及び運航関係の業務、〈2〉船荷の獲得、荷主との間の連絡等の集荷業務のほか、〈3〉通常の代理店が行わないような業務である本件船会社のための集中会計、船舶の運航、市場開拓関係の調整、運賃同盟関係事項等の業務を自己の業務とし、東京及び大阪の各支店において、船荷の獲得、荷主との連絡及び各支店への集荷状況の連絡等の主として集荷業務を、横浜、名古屋及び神戸の各支店において、同様の集荷業務のほか、入出港の手配、船用品の積込み及び船舶修理の手配等並びに運賃の受取り及び船荷証券の発行等の船主関係及び運航関係業務を、東京本店において、これらの総括及び本件船会社との連絡並びに運賃同盟関係事項等の業務をそれぞれ担当して行い、このうち、〈1〉及び〈2〉の業務については、輸出の場合には運賃の五パーセント、輸入の場合には運賃の二パーセントに相当する額の代理店手数料を、また、〈3〉の業務に関しては、実費に五パーセントを加えた額に相当する管理手数料を本件船会社から収受している。

(2)  海運代理店業とは、船舶運航事業又は船舶貸渡事業を営む者のために通常その事業に属する取引の代理をする事業をいうものである(海上運送法二条一〇項)が、船舶運航事業とは、海上において船舶により人又は物の運送をする事業をいい(同法二条二項)、これは社会通念上、いわゆる総合的な事業活動であるから、海運代理店の代理する船舶運航事業に関する通常その事業に属する取引とは、広範囲に、右事業に関連する業務のほとんどすべてを含むものと捉えるべきである。

また、原告は、本件船会社の代理商としての地位を有するところ、原告が、その設立後の昭和四八年八月一五日付けで関東海運局長宛に提出した海運代理店業開始届の記載によれば、原告がいわゆる締約代理商として、広範な代理権を有することが明らかであり、加えて、本件船会社は、日本においては集荷業務等の事業活動を一切行わず、これを原告の営業活動に全面的に依存しているのであり、また、本件船会社が原則として海上運送法の適用を受けない(同法四二条。昭和六一年法律第九三号による改正前は同法四二条の三)ことを併せ考えれば、日本における本件船会社に関する通常その事業に属する取引はすべて原告によって代理され、本件船会社自身は単に船舶を運航させ、事業としての人又は物の運送のみを行えば足りるとするのが本件船会社及び原告の意思に合致するものというべきである。

(3)  ところで、原告は、独立の内国法人格を有し、(2) のとおり、本件船会社の代理商としての地位を有する。しかして、代理商とは、一定の商人のために継続的にその営業の部類に属する取引を代理又は媒介するものであるが、当該商人の使用人ではなく(商法四六条)、独立した商人として、本人とは別個に経済活動を行い、自らの利潤を追求する企業体であるところ、原告は、(2) のとおり、本件船会社のいわゆる締約代理商として広範な代理権を有し、法的、経済的独立性の強度な代理商である。

(二) 本件交際費の内容等

(1)  本件交際費は、原告の従業員が(一)の(1) の業務に関連し、取引先関係者等に対する供応接待として、食事、ゴルフ等を共にするために支出した飲食代金、プレー代金その他の費用であるが、金額的には、船荷獲得関係等の集荷業務に関連して荷主となるべき企業関係者を接待の相手方としたものが、その大部分を占めている。そして、右の具体的な各接待行為は、原告の各本支店の従業員のする接待行為の申請に基づいて、当該各本支店長又は副支店長が接待の相手方、接待の態様、支出金額、支出時期等について承認を与えることによって決定され、その実行に際しては原告の従業員が接待行為に当たり、これに要した費用として支出される金額が本件交際費を構成するのであって、右の具体的な各接待行為の決定、実行、費用の支出の過程において本件船会社の関与を受けることはなく、原告自らの判断と計算において、かつ、行為主体を原告としてされているのであるし、接待の相手方においても、原告からの接待と認識しているのである。

(2)  交際とは、人の情緒的側面に働きかけて、人と人との繋がりの親密化を図るところの行為主体に固有の社会活動形態であり、社会生活上いわば潤滑油的な役割を果たすものであるから、交際によってもたらされる効果は行為主体に帰属するものであり、右の効果が行為主体に帰属するが故にひいて行為主体と密接な関係にある者に波及することがあるとしても、それは反射的ないし副次的な効果に過ぎない。そして、この理は、個人のみならず、社会的存在として営業活動を行う企業についても同様である。すなわち、本件交際費に係る接待行為を行う行為主体は原告であり、その効果は、海運代理店として、船会社に代わり船会社のために、船荷獲得等の集荷業務その他の業務を行うことを自らの事業内容とする原告について、船荷獲得量の増大等原告自身の営業実績の拡大あるいは業務遂行の円滑というような形態で結実するものである。海運代理店の船荷の獲得がひいて船会社の利益になるとしても、それは、海運代理店業務の内容上当然のことであって、それがために海運代理店の船荷獲得業務が船会社の業務となり、あるいは、船荷獲得のために海運代理店の支出した費用が船会社の経費となるものではない。

なお、(一)のとおり、原告は、広範な代理権をもち、法的、経済的独立性の強い締約代理商であるから、このことからも本件交際費に係る原告を行為主体とする接待行為が原告自身のために行われたことは明らかである。

(三) 原告の経理処理の変更

(1)  原告は、その設立後、昭和四八年七月一六日から同年九月三〇日までの事業年度(以下「昭和四八年九月期」という。)に一一七五万〇二三二円の、同年一〇月一日から昭和四九年九月三〇日までの事業年度(以下「昭和四九年九月期」という。)に四五四五万〇五五一円の各交際費を支出し、いずれも全額原告自身に帰属する交際費等としての経理処理をして申告に及んだ(ただし、昭和四九年九月期の更正後の交際費等の金額は五二五四万九八五四円である。)。

(2)  しかるに、原告は、右各事業年度に続く昭和五〇年九月期の途中である昭和五〇年二月二六日付けで本件船会社との間で、特定の交際費を本件船会社が負担する旨記載のある契約書(後記五の2の本件契約に係る契約書)を取り交わすや、本件交際費の支出を、昭和五〇年九月期の期首に遡らせて本件船会社に対する立替金とする旨経理処理を変更し、さらに、昭和五六年一二月期の途中である同年八月以降は、本件船会社から得た資金を本件船会社名義の非居住者自由円預金口座に入金して、原告の帳簿を通すことなく、右口座から直接本件交際費を引き出して支出する方法に変更した。

(3)  しかしながら、原告がその設立当初に交際費の支出を自己に帰属する交際費として経理処理したことは、原告固有の経営方針を示すものであり、その後特別の事情が認められない限り、同様の経理処理を行うのが当然であるところ、右の契約書の内容又はその作成に至る経過に徴しても、設立当初に原告自身に帰属する交際費として処理されたものが、何故にその後になって本件船会社に帰属すべき交際費となるかについての合理的な理由を見いだすことはできず、右の契約書は、原告がその固有の交際費を支出するにつき、本件船会社がこれを援助すること(実質的には、代理店手数料の増額である。)を定めたにすぎないものと解される。したがって、この点からみても、本件交際費が原告に帰属することは明らかである。

3  各更正及び賦課決定の適法性

(一) 昭和五〇年九月期

原告の昭和五〇年九月期の所得金額一億六二五四万六八二五円は、昭和五〇年九月期更正に係る所得金額と同額であるから、右更正は適法である。また、国税通則法六五条一項(ただし、昭和五九年法律第五号による改正前のもの。以下同じ。)に則り、右更正に基づいて納付すべき法人税額一八二九万二〇〇〇円(昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)に一〇〇分の五を乗じて得た額である九一万四六〇〇円の過少申告加算税を賦課した昭和五〇年九月期賦課決定も適法である。

(二) 昭和五一年九月期

原告の昭和五一年九月期の所得金額三四〇六万六四一七円は、昭和五一年九月期更正に係る所得金額と同額であるから、右更正は適法である。また、国税通則法六五条一項に則り、右更正に基づいて納付すべき法人税額一二七八万六〇〇〇円(昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)に一〇〇分の五を乗じて得た額である六三万九三〇〇円の過少申告加算税を賦課した昭和五一年九月期賦課決定も適法である。

(三) 昭和五二年九月期

原告の昭和五二年九月期の所得金額一六二万一八一〇円は、昭和五二年九月期更正に係る所得金額と同額であるから、右更正は適法である。また、国税通則法六五条一項に則り、右更正に基づいて納付すべき法人税額四五万三〇〇〇円(昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)に一〇〇分の五を乗じて得た額である二万二六〇〇円(昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法一一九条四項により一〇〇円未満の端数切捨て)の過少申告加算税を賦課した昭和五二年九月期賦課決定も適法である。

(四) 昭和五三年九月期

原告の昭和五三年九月期の所得金額六八三万二七二五円は、昭和五三年九月期更正に係る所得金額と同額であるから、右更正は適法である。また、国税通則法六五条一項に則り、右更正に基づいて納付すべき法人税額一九一万二〇〇〇円(昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)に一〇〇分の五を乗じて得た額である九万五六〇〇円の過少申告加算税を賦課した昭和五三年九月期賦課決定も適法である。

(五) 昭和五三年一二月期

原告の昭和五三年一二月期の欠損金額一七五六万三九七九円は、昭和五三年一二月期更正に係る欠損金額と同額であるから、右更正は適法である。

(六) 昭和五四年一二月期

原告の昭和五四年一二月期の欠損金額六七六九万六〇三一円は、昭和五四年一二月期更正に係る欠損金額と同額であるから、右更正は適法である。

(七) 昭和五五年一二月期

原告の昭和五五年一二月期の所得金額六六五四万七八二二円は、昭和五五年一二月期更正に係る所得金額と同額であるから、右更正は適法である。また、国税通則法六五条一項に則り、右更正に基づいて納付すべき法人税額二五七七万八〇〇〇円(昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)に一〇〇分の五を乗じて得た額である一二八万八九〇〇円の過少申告加算税を賦課した昭和五五年一二月期賦課決定も適法である。

(八) 昭和五六年一二月期

原告の昭和五六年一二月期の所得金額八五七二万六八一三円は、昭和五六年一二月期更正に係る所得金額と同額であるから、右更正は適法である。また、国税通則法六五条一項に則り、右更正に基づいて納付すべき法人税額三四二一万円(同法一一八条三項により一万円未満の端数切捨て)に一〇〇分の五を乗じて得た額である一七一万〇五〇〇円の過少申告加算税を賦課した昭和五六年一二月期賦課決定も適法である。

(九) 昭和五七年一二月期

原告の昭和五七年一二月期の欠損金額九一五二万〇八八二円は、昭和五七年一二月期更正に係る欠損金額と同額であるから、右更正は適法である。

(一〇) 昭和五八年一二月期

原告の昭和五八年一二月期の欠損金額二億〇五一二万五九八三円は、昭和五八年一二月期更正に係る欠損金額と同額であるから、右更正は適法である。

四  抗弁に対する認否

1(一)(1) 抗弁1の(一)の(1) うち、別表二の一のI(申告所得金額)、II(加算額)のうちの3(役員賞与の損金不算入額)、4(繰延資産の償却超過額)及び5(手数料収入計上漏れ)並びにIII (減算額)のうちの2(事業税の損金算入額)は認め、その余は争う。

(2) 同(2) のうち、アの二五五万五八六九円に関する部分及び原告が昭和五〇年九月期にイの四八九四万〇七〇四円について主張の方法で処理をして右金額を本件船会社に負担させたことは認め、その余は争う。

(3) 同(3) のうち、原告が昭和五〇年九月期に支出した交際費等の額を九一四万五六〇九円として申告したこと、並びに、右交際費等の額に、同(2) のアの二五五万五八六九円及び原告が社交クラブ会費及びゴルフ会費等として支出した二四万〇八〇〇円を加算すべきものであることは認め、その余は争う。

(4) 同(4) のうち、同(2) のアの二五五万五八六九円に対応する部分については認め、その余は争う。

(二)(1) 同(二)の(1) のうち、別表二の二のI(申告所得金額)及びII(加算額)のうちの3(役員賞与の損金不算入額)は認め、その余は争う。

(2) 同(2) のうち、原告が昭和五一年九月期に六三六一万一〇〇二円について主張の方法で処理をして右金額を本件船会社に負担させたことは認め、その余は争う。

(3) 同(3) のうち、原告が昭和五一年九月期に支出した交際費等の額を九一一万八四一五円として申告したことは認め、その余は争う。

(4) 同(4) は争う。

(5) 同(5) のうち、別表三の一のI(支出した寄付金額)、IIのI(所得金額仮計申告額)及び4(期末の資本等の金額)並びにIII の2(申告に係る損金不算入額)は認め、その余は争う。

(三)(1) 同(三)の(1) のうち、別表二の三のI(申告所得金額)は認め、その余は争う。

(2) 同(2) のうち、原告が昭和五二年九月期に六三七八万三三一四円について主張の方法で処理をして右金額を本件船会社に負担させたことは認め、その余は争う。

(3) 同(3) のうち、原告が、昭和五二年九月期に支出した交際費等の額を九六三万四八三〇円、交際費等の損金不算入額を四四七万九九六二円として申告したことは認め、その余は争う。

(4) 同(4) は争う。

(5) 同(5) のうち、別表三の二のI(支出した寄付金額)、IIの1(所得金額仮計申告額)及び4(期末の資本等の金額)並びにIII の2(申告に係る損金不算入額)は認め、その余は争う。

(6) 同(6) は争う。

(四)(1) 同(四)の(1) のうち、別表二の四のI(申告所得金額)は認め、その余は争う。

(2) 同(2) のうち、原告が昭和五三年九月期に五八五七万一一二〇円について主張の方法で処理をして右金額を本件船会社に負担させたことは認め、その余は争う。

(3) 同(3) のうち、原告が、昭和五三年九月期に支出した交際費等の額を一〇六六万四九六一円、交際費等の損金不算入額を五七二万六二二五円として申告したことは認め、その余は争う。

(4) 同(4) は争う。

(5) 同(5) のうち、別表三の三のI(支出した寄付金額)、IIの1(所得金額仮計申告額)及び4(期末の資本等の金額)並びにIII の2(申告に係る損金不算入額)は認め、その余は争う。

(6) 同(6) は争う。

(五)(1) 同(五)の(1) のうち、別表二の五のI(申告所得金額)及びII(加算額)のうちの3(寄付金の損金不算入額)は認め、その余は争う。

(2) 同(2) のうち、原告が昭和五三年一二月期に二二二三万一九一六円について主張の方法で処理をして右金額を本件船会社に負担させたことは認め、その余は争う。

(3) 同(3) のうち、原告が昭和五三年一二月期に支出した交際費等の額を四三五万九九八九円、交際費等の損金不算入額を三〇八万四七四三円として申告したことは認め、その余は争う。

(4) 同(4) 及び(5) は争う。

(六)(1) 同(六)の(1) のうち、別表二の六のI(申告所得金額)は認め、その余は争う。

(2) 同(2) のうち、原告が昭和五四年一二月期に五九二四万〇六六一円について主張の方法で処理をして右金額を本件船会社に負担させたことは認め、その余は争う。

(3) 同(3) のうち、原告が昭和五四年一二月期に支出した交際費等の額を八二二万〇一六六円として申告したことは認め、その余は争う。

(4) 同(4) は争う。

(七)(1) 同(七)の(1) のうち、別表二の七のI(申告所得金額)は認め、その余は争う。

(2) 同(2) のうち、原告が昭和五五年一二月期に六二二一万〇〇〇五円について主張の方法で処理をして右金額を本件船会社に負担させたことは認め、その余は争う。

(3) 同(3) のうち、原告が昭和五五年一二月期に支出した交際費等の額を一三九六万七三三三円、交際費等の損金不算入額を一一三〇万四二一五円として申告したことは認め、その余は争う。

(4) 同(4) 及び(5) は争う。

(八)(1) 同(八)の(1) のうち、別表二の八のI(申告所得金額)は認め、その余は争う。

(2) 同(2) のア及びイについては、原告が昭和五六年一二月期にアの三八一二万八三五三円及びイの二三四四万八四八七円についてそれぞれ主張の方法で処理及び支出をして、右各金額を本件船会社に負担させたことは認め、その余は争う。同ウについては、原告が主張の三三〇万円について主張の方法で処理をして右金額をトリコラロイド社に負担させたことは認める。

(3) 同(3) のうち、原告が昭和五六年一二月期に支出した交際費等の額を二八〇三万〇八五六円として申告したことは認め、その余は争う。

(4) 同(4) は争う。

(5) 同(5) のうち、別表三の四のI(支出した寄付金額)、IIの1(所得金額仮計申告額)及び4(期末の資本等の金額)並びにIII の2(申告に係る損金不算入額)は認め、その余は争う。

(九)(1) 同(九)の(1) のうち、別表二の九のI(申告所得金額)は認め、その余は争う。

(2) 同(2) のア及びイについては、原告が昭和五七年一二月期にアの一〇万円及びイの六五六〇万五七一一円についてそれぞれ主張の方法で処理及び支出をして、右各金額を本件船会社に負担させたことは認め、その余は争う。同ウについては、原告が主張の三六〇万円について主張の方法で処理をして右金額をトリコラロイド社に負担させたことは認める。

(3) 同(3) のうち、原告が昭和五七年一二月期に支出した交際費等の額を一八八八万三六六四円、交際費等の損金不算入額を六九六万二八二四円として申告したことは認め、その余は争う。

(4) 同(4) は争う。

(5) 同(5) の前段は争う。後段のうち、原告が、昭和五九年一二月期の確定申告において、昭和五六年一二月期更正により増加した所得金額に対する事業税につき主張の経理処理をして、一四万〇八八〇円の損金算入不足額を自ら損金算入したこと、原告の昭和五七年一二月期から昭和六〇年一二月期までの各事業年度は多額の欠損金額が生じていて、いずれにせよ、法人税、加算税等が課されることはないことは認め、その余は不知。

(一〇)(1) 同(一〇)の(1) のうち、別表二の一〇のI(申告所得金額)は認め、その余は争う。

(2) 同(2) のア及びイについては、原告が昭和五八年一二月期にアの三万三〇〇〇円及びイの五六四八万九三二六円についてそれぞれ主張の方法で処理及び支出をして、右各金額を本件船会社に負担させたことは認め、その余は争う。同ウについては、原告が主張の六〇〇万円について主張の方法で処理をして右金額をトリコラロイド社に負担させたことは認める。

(3) 同(3) のうち、原告が、昭和五八年一二月期に支出した交際費等の額(損金不算入額)を一九六三万三三〇三円として申告したことは認め、その余は争う。

(4) 同(4) は争う。

2(一) 同2の柱書きのうち、本件交際費が本件船会社に帰属すべき交際費ではなく、原告自身に帰属すべき交際費であることは争い、その余は認める。

(二) 同(一)のうち、(1) は認め、(2) 及び(3) 争う。

(三)(1) 同(二)の(1) のうち、本件交際費が原告の義務に関連するものであること、具体的な各接待行為の決定、実行、費用の支出の過程において本件船会社の関与を受けることはないこと、接待の相手方において原告からの接待と認識していることは争い、その余は認める。

(2) 同(2) は争う。

(四) 同(三)のうち、(1) 及び(2) は認め、(3) は争う。

3 同3は争う。

五  原告の主張

1  本件交際費の性質

本件交際費は、原告が本件船会社から委任された特別関係業務を遂行する上で、必要な経費として支出されたもので、その支出目的、法的性質、接待の相手方の認識、本件交際費支出の主たる効果の帰属、本件船会社による本件交際費支出の管理等、いずれの面からみても、本来本件船会社の支出に帰すべき性質を有するものである。

(一) 本件交際費の支出目的及び法的性質

原告は、本件船会社との間で締結した海運代理店契約により、日本に人員と施設とを有さず、かつ、日本の取引慣行を知らない本件船会社が自ら直接行うことのできないその事業に属する取引を継続的に行うことの委任(又は準委任。以下単に「委任」という。)を受けているものである。そして、本件交際費は、右海運代理店契約に基づき、原告が、船荷の集荷、船舶の配船及び寄港等の港湾関係事項並びに運賃同盟関係の円滑化のために行った接待行為の費用であるが、かかる接待行為は、原告の設立以前は、原告の前身である日本支店を通じて本件船会社自身が行っていたものであり、原告の設立に伴って、従前本件船会社が獲得していた顧客を維持するために接待行為を継続する必要があったものの、本件船会社自身が接待行為をすることが不可能となったために、原告にこれが委任されて、以後、原告において、従前の本件船会社の顧客を被接待者とし、概ね同一の規模で接待行為を継続してきたものである。このように、右接待行為の相手方である荷主等の顧客は、原告ではなく本件船会社の得意先であり、本件船会社との間で運送契約関係を有するに至るものであって、原告は、荷主等の顧客との関係においては、単に本件船会社の代理店として関与しているにすぎないのであるから、右船荷の集荷等の業務及びそのための接待行為は、本来は本件船会社の業務であって、本件船会社から委任を受けた原告が本件船会社に代わって行ったものである。したがって、本件交際費は、原告が本件船会社から委任された事務を処理するための必要費に該当するものであり、委任の法的性質上、原告は、本件船会社から、本来的に原告の支出した委任事務処理の必要費として、右費用の償還を求め得る地位にあるところ、本件交際費については、原告と本件船会社との後記2の本件契約により、本件船会社において実費清算するものと定めて、これを本件船会社の契約上の義務としたにすぎないものであるから、本件交際費は、本件船会社に帰属すべきであることは明らかである。

なお、代理商は、独立した商人として、自らの判断と計算において営業活動をするものであるが、このことと代理商が本人のために活動を行うに当たり、本人のために支出した必要費を、委任の報酬とは別途に本人に償還請求し得ることとは、何ら矛盾するものではない。

(二) 被接待者の認識

接待行為に係る交際費の負担者を決するに当たっては、当該接待行為の目的、性質、その客観的効果を吟味することが重要であり、被接待者の主観は重視されるべきではないが、あえて、被接待者の主観を考慮に入れるとすれば、被接待者において、誰が当該接待行為を直接行っていると認識しているかの点ではなく、いかなる取引に関して当該接待を受けていると認識しているかの点を問題とすべきである。

しかるところ、本件交際費に係る接待行為の被接待者らは、いずれも当該接待行為が、原告の代理店業務に係る国際運送事業上の取引に関してされたものであることを十分に認識しているものである。

(三) 本件交際費支出の効果

(1)  本件交際費は、(一)のとおり、原告が、船荷の集荷、船舶の配船及び寄港等の港湾関係事項並びに運賃同盟関係の円滑化のために行った接待行為に支出されたものであるが、その大部分は船荷の集荷のための接待行為に係るものである。

しかして、(一)のとおり、原告は、設立以来、本件船会社に代わってその顧客たる荷主に対する接待行為を継続してきたものであり、かかる接待行為により現実に本件船会社の運賃収入の維持、増加がもたらされたものであるところ、これにより生じた経済的利益の大部分は本件船会社が直接享受し、原告は、本件船会社の運賃収入の維持、増加に比して、僅かに輸出について五パーセント、輸入について二パーセントの割合においてのみ、間接的反射的に代理店手数料の維持、増加の利益を受けるにすぎない。したがって、かかる接待行為の効果は本件船会社に帰属するものというべきである。

(2)  船舶の配船及び寄港等の港湾関係事項に係る接待行為は、本件船会社による船舶の運航や能率的な入出港等のために行われるものであるが、原告の海運代理店としての収入の増減には直接関連がなく、その効果は、専ら本件船会社の円滑な船舶運航の利益として生ずるものであり、本件船会社への効果の帰属が直接的に認められるものである。

(3)  運賃同盟は、一定航路に配船している船会社がその共同利益を追及するために組織したものであり、その構成員は船会社に限られ、海運代理店は構成員たる資格をもたない。本件において、運賃同盟に加盟し、その活動を行い、その利益を享受するのは本件船会社であり、原告は、本件船会社自身が日本においてかかる活動をすることができないために、その利益のため日本における運賃同盟関係の活動の一部を代行しているものの、かかる活動に関連して何らかの利益を得るということはあり得ない。したがって、原告が運賃同盟関係の円滑化のために行う接待行為の効果は全部本件船会社に帰属するものであり、かかる接待行為に係る交際費を本件船会社が負担するのは当然である。

(4)  以上のほか、本件交際費中には、本件船会社又は原告の親会社からの来客の接待のために支出した費用が含まれている。かかる費用の帰属は、本件交際費中の他の項目とは異なり、海運代理店の業務に関係して支出された交際費の海運代理店と船会社との間の分担の問題ではなく、親会社又はその系列会社と子会社との間の人の往来に関して生じた費用の分担の問題であるが、本件船会社が負担する旨の合意がされたが原告がとりあえず立替払いした場合又は右の合意はなかったが原告において本件船会社の負担とする旨判断した場合に、本件交際費中の他の項目と同様の処理がされ、後記(四)の(1) のとおり、本件船会社の事後のチェックを経た上で、本件交際費の一部を構成するに至るものである。右のような当事者間の事前又は事後の合意により、本件船会社の負担とされたものについて、右合意を否定し、原告の交際費として原告に負担させる理由はない。

(四) 本件船会社による本件交際費支出の管理

(1)  本件交際費は、原告と本件船会社との間の後記2の本件契約に基づいて、項目別に立てられた予算案を基にする原告と本件船会社との必要性及び金額についての議論を経た後、本件船会社が最終決定した年間予算の枠内でまかなわれ、かつ、その支出に当たっては、事前に原告と本件船会社との協議により定められた様式のエンターテイメントフォーム(交際費申請書)に従って原告の各本支店の責任者の決裁を得ること及び接待の実行後にもその内容を報告して改めて右責任者の検査承認を経ることが必要とされており、帳簿上も立替金として処理されるものである。また、本件船会社は、毎月、本件交際費の支出日時及び金額等につき詳細な報告を原告から受けてこれに承諾を与えるほか、三か月に一度程度のスポットチェック及び年次報告によるチェックを行っており、かつ、これらの事後的報告によって実質的に年次予算折衝を通じての次年度以後の個々の接待に関する事前チェックをも行っている。

このように本件交際費支出に関しては、本件船会社による合理的に可能な限りの十分な管理が行われているが、これに加え、原告の枢要なポストには、本件船会社から派遣された者が配置され、本件船会社は、これらの者を通じて原告の組織の内部からもチェックを行っているのである。

(2)  被告は、本件交際費に係る個々の具体的な接待行為が、その決定、実行、費用の支出の過程において逐一本件船会社の関与を受けることはないとして、本件交際費が原告自らの判断と計算において支出された原告独自の費用である旨主張する。

しかし、本来、接待行為は偶発的流動的要素に支配されるものである上、本件船会社は日本社会における効果的な接待方法を熟知しているわけではないのであるから、個々の具体的な接待行為の決定等に逐一本件船会社の関与を求めるのは物理的に不可能である上、営業的にも拙劣な方法といわざるを得ない。そこで、原告と本件船会社とは、接待を臨機応変の効果的なものとするために、後記2の本件契約により、原告に一定の枠内で細目についての裁量権を与えて交際費支出を委任したものである。

しかして、本件交際費の支出は、(1) のとおり、本件船会社による合理的に可能な限りの事前審査を経て支出され、かつ、事後のチェックも受けているのであるから、基本的、窮極的には、本件船会社の判断と責任において支出されたものというべきである。

(3)  なお、代理制度は、本人の取引であってもその全般にわたって本人のみで処理することが現実的に不可能となったから、代理人の知識と才能とを利用しようというものであり、一定の範囲内において処理を代理人の裁量に委ねることは、元来、制度自体の予定しているところである。したがって、代理人の行為に代理人の裁量による部分があったからといって、それが本人のための行為ではなく、代理人自身のための行為であるとするのは、代理制度の趣旨に反するものである。

2  本件交際費負担に関する契約

(一) 本件契約の内容

原告と本件船会社とは、昭和五〇年二月二六日、交際費の負担に関する契約(以下「本件契約」という。)を締結し、船荷の集荷、船舶の配船及び寄港等、運賃同盟関係及び船客の獲得のために行った接待行為に係る交際費は、本件船会社が負担する旨定めた。

(二) 本件契約締結に至る経緯

(1)  原告がローヤル・インターオーシャン社の日本支店であった当時には、その支出した経費を支店固有の経費と交際費のごとく本社に帰属すべき経費とに区分し、後者について本社経費の立替払いとする会計処理をすべき実際上の必要性はなく、右のような処理をしてはいなかったが、ローヤル・インターオーシャン社から独立し日本法人として設立されたことに伴い、原告は、その当初から、本件船会社の代理店の業務が本件船会社のための特別関係業務となり、したがって、交際費などの特別関係業務遂行に伴う経費を通常の代理店業務に対する手数料とは別個に本件船会社が負担すべきことを明確にすべき必要があることを予測していた。しかしながら、原告は、当初、本件船会社の子会社のさらに子会社であったため、本件船会社の方針を変更させるには困難が伴い、とりわけ、交際費を本件船会社の負担とさせるためには、営業開始後の客観的数値をもって本件船会社に説明する必要があったこと及び社内における本件船会社の経費と原告自身の経費とを区分する会計処理の確立に時間を要すること等から、昭和四八年九月期及び昭和四九年九月期においては、過渡的に交際費を自己の経費として計上していた。

(2)  その後、昭和五〇年九月期には、交際費を本件船会社の負担とさせるための諸条件も整ったので、原告は、後日その旨の合意がされることを見越して、交際費を本件船会社の経費として立替支出する会計処理を実施していたところ、昭和五〇年二月二六日、本件船会社も右の経緯を了解し、交際費を昭和五〇年九月期当初から本件船会社の経費とする旨の本件契約が締結され、以後の各事業年度において、原告は、本件契約に基づいて、交際費を立替払いとして支出する会計処理をしている。

(3)  しかして、被告は、原告がその設立当初に交際費の支出を自己の交際費等として経理処理したことを原告固有の経営方針を示すものである旨主張するが、(1) 及び(2) のとおり、原告が設立当初に交際費を自己の経費として計上したのは、外国法人の日本支店を現地法人化する際に一般的に生ずる会計処理上の混乱及び外国法人の側の経営政策上の過渡的混乱に起因するものである。

(4)  なお、本件契約は、交際費につき、本来これを負担すべき本件船会社がこれを負担する旨を明確にしたものであるから、本件契約が昭和五〇年九月期の中途において締結されたものであるとしても、その効力を同事業年度の開始日に遡及して発生させることに何ら不自然な点はないし、そうするかどうかは、当事者自治の問題である。交際費は本来本件船会社がこれを負担すべきものであることからすれば、むしろ、本件契約の効力は、原告の設立の日に遡って発生させるべきものであるが、会計年度及び税務申告の関係上、それが困難であることから、原告は、本件契約をその締結日の属する事業年度の開始日に遡及させることに甘んぜざるを得なかったのである。また、原告は、(2) のとおり、右事業年度の開始当初から、後日の合意を見越して、交際費を本件船会社の経費として立替支出する会計処理を実施していたところ、本件船会社も右経緯を了解して本件契約の効力を右事業年度の開始日に遡及させることに同意したものである。

(三) 本件契約と運賃同盟規約

本件船会社を含む国際的船会社は、同業者間の過当競争を避けるために運賃同盟を結成して種々の規約を設けているが、そのうち、海運代理店に関する規約によれば、船会社は海運代理店に対し最高限五パーセントの手数料を除いては、名目を問わず、また、直接間接にかかわらず、いかなる支払いをすることをも禁じられており、これが同業者間の確立した慣行となっている。そして、この違反に対しては、多額の罰金又はこれに加え除名等の制裁が加えられることとされている。

しかしながら、右規約の下においても、海運代理店が外国船会社のために支出した交際費は船会社が負担するとすることが日本における海運代理店業界の一般の慣行であるが、これが規約違反とされたことはなく、したがって、本件契約も運賃同盟において、問題とはされていない。

3  租税実質主義

(一) 租税実質主義は、租税法の根本原則の一であり、交際費等の支出の主体決定に関係する法規の解釈及び事実認定においても当然に妥当するものである。

(二) 租税実質主義の考え方は、租税特別措置法関係通達(以下「措置法通達」という。)中にも現われている。

すなわち、措置法通達六二(一)-一八の(1) は、二以上の法人が共同して接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為をして、その費用を分担した場合においても交際費等の支出があったものとするとして、複数の法人が共同して接待等の行為をした場合には、各法人の約定による分担額を各法人の交際費等と認めているが、この取扱いは、経済的、法律的実態に即して、合理的範囲内で当事者の約定を尊重した上、租税実質主義の原則からは当該接待等の行為の費用がいずれの法人に帰せしめられるべきかという観点から導かれたものである。

また、措置法通達六二(一)-一二の(4) 及び(5) は、原則として交際費等の金額に含まれるものとして、製造業者又は卸売業者がその製品又は商品の卸売業者に対し、当該卸売業者が小売業者等を旅行、観劇等に招待する費用の全部又は一部を負担した場合のその負担額を挙げるとともに、これに対応して、得意先、仕入先その他事業に関係のある者(製造業者又はその卸売業者と直接関係のないその製造業者の製品又はその卸売業者の扱う商品を取り扱う販売業者を含む。)等を旅行、観劇等に招待する費用を原則として交際費等に含まれる金額としながら、卸売業者が製造業者又は他の卸売業者から受け入れる右の負担額に相当する金額を交際費等の金額に含まれるものから除外している。この例においては、被接待者である小売業者と直接の取引関係のない製造業者は、卸売業者の行う接待行為によって卸売業者の販売額が増加したとしても、直接の利益はなく、単なる反射的効果を受けるのみであるが、卸売業者と小売業者とのあいだの取引量の増大が事実上、経済上、製造業者の利益に関連を有することから、卸売業者の接待行為に製造業者が費用負担した場合にその負担額は製造業者の交際費等と認めることとしたものであって、租税実質主義から導かれる取扱いである。この場合には、租税実質主義の立場からは、卸売業者を通じて自己の費用で間接的に接待行為を行い、間接的にせよその利益を受けるのが製造業者であるという事実が重要なのである。

(三) 租税実質主義の立場からすれば、第一に、本件交際費に係る接待行為の相手方である荷主等は、本件船会社の直接の取引先なのであるから、本件交際費を本件船会社が負担する旨の本件契約は税法上も効力を有し、本件交際費は本件船会社に帰属するものと認められるべきである。第二に、仮に、本件交際費に係る接待行為の相手方である荷主等が本件船会社ではなく原告の取引先であり、したがって、本件交際費が原告の業務関連費用であるとしても、右接待行為の効果として集荷量が増大すれば、本件船会社の運賃収入が増大する関係にあることが明らかである以上、本件交際費は本件船会社に帰属するものと認められるべきであって、この場合に直接の接待行為を誰が行ったか、その接待行為者も同時に何らかの利益を受ける場合であるか等は問題とならないというべきである。

4  慣行

本件交際費を原告に帰属するものとして、これに対する課税(損金不算入)を行うことは、次のとおり、国際税務慣行及び業界内における慣行に反するものである。

(一) 国際税務慣行

本件船会社は、世界各国に海運代理店業を営む系列の子会社を二六社有しており、そのうちの一七社は、原告と同様一〇〇パーセント子会社である。そして、本件船会社は、これらの各子会社に対し、原告に対すると同様の交際費規制、すなわち、本件船会社による年間予算の承諾、各接待行為毎の統一様式のエンターテイメントフォームによる接待行為のチェック、詳細な接待行為毎の月次明細書によるチェック及び年次明細書によるチェックを行っており、無駄な経費の支出を最大限抑制すべく、交際費の支出に厳しい規制を行っているとともに、その上で、交際費を本件船会社の経費とする原告に対すると同様の経理処理を世界共通に行っている。

このような本件船会社が原告を含む子会社との間で全世界的に行っている慣行は、本件につき、日本の税法を解釈適用する際の基本的な前提事実として重視されなくてはならない。

なお、世界各国の税務実務において、本件と同様の処理がされた交際費が本件船会社に帰属する経費と認められているか否かは、各国には交際費の損金不算入制度がないため、これと無関係な実質的費用負担者の認定の問題となるが、本件船会社は、本件のほか、他にこれと同様の問題を経験してはいない。

(二) 業界の慣行

海運業界内で、原告と同様の立場の外国船会社の海運代理店が船会社との間で交際費の負担をどのように処理しているかという点も租税実質主義に従って課税する際の重要な基礎的前提事実となるべきところ、2の(三)のとおり、運賃同盟の海運代理店に関する規約の下においても、海運代理店が外国船会社のために支出した交際費を船会社が負担することが業界一般の慣行である上、これが海運代理店に対し最高限五パーセントの手数料以外のいかなる支払いをも禁じた右規約に違反するものとはされておらず、交際費は船会社の経費と考えられているのである。このことは、右の限度の手数料収入では、集荷関係に伴う交際費を到底まかなうことができないことによるものである。

5  租税条約との関係

仮に、本件交際費が本件船会社ではなく原告の業務関連費用であるとしても、原告の所得の算定に当たって交際費の損金不算入を定めた措置法の規定を適用することは、以下のとおり、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とオランダ王国政府との間の条約(昭和四五年条約第二一号。以下「租税条約」という。)に違反するものである。

(一) 原告は、租税条約の適用上、オランダの法人である本件船会社の日本にある恒久的施設(租税条約五条)であり、このことは、原告が法人格を有するとしても、変わるところはない。

租税条約上、オランダの法人に対する日本の課税権は、当該法人の利得のうちの恒久的施設に帰せられる部分についてしか及ばない(同八条一項)ところ、本件船会社の恒久的施設としての原告に帰せられる利得とは、第三者が当該恒久的施設としての原告と同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行ったとした場合に当該第三者が取得するとみられる利得をいい(同条二項)、日本にある恒久的施設としての原告に帰せられる顧客から受け取る運送代金収入に係る利得がこれに当たると考えることができるが、恒久的施設に帰せられる利得を決定するに当たっては、経営費及び一般管理費を含む費用でその恒久的施設のために生じたものは、その恒久的施設が存在する国において生じたか又は他の場所で生じたかを問わず、経費に算入することが認められるものとされているから(同条三項。なお、右の経営費及び一般管理費を含む費用という用語が租税条約で用いられる以上、その意味は日本及びオランダの企業会計原則に則って解釈されるべきであるところ、日本のみならず一般に承認された国際企業会計原則上、企業の支出する交際費が経費に当たることには異論がないから、交際費等の損金不算入を定めた措置法の規定にかかわらず、交際費の全部が経費に算入されるものと解釈されるべきである。)、結局、本件船会社の日本にある恒久的施設としての原告に帰せられる利得とは、原告に帰せられる運送代金収入から原告に支払われる代理店手数料及び恒久的施設である原告のために生じた港湾関係費用、広告宣伝費、荷主接待等のための交際費などの費用を控除したものである。しかし、原告の人件費や家賃等の費用は右控除すべき費用中に含まれない。なぜなら、本件船会社と原告との間に、代理店手数料、港湾関係費用、広告宣伝費、荷主接待等のための交際費などの特定費用は本件船会社の負担とするが、原告の人件費や家賃等の一般費用は原告が負担する旨の合意があり、本件船会社の立場に立った場合、これらの費用は、原告が独自の判断と危険において支出するものであって、その支出額等について、本件船会社の支配は及び得ないからである。

もっとも、本件船会社に対しては、租税条約九条及び外国人等の国際運輸業に係る所得に対する相互主義による所得税等の非課税に関する法律の適用があるから、その所得に対する法人税の課税は、結局されないこととなる。

(二) 原告は、日本法人であるから、日本が原告に対して課税権を有することは当然である。しかしながら、原告が本件船会社の日本にある恒久的施設である以上、日本法人としての原告に対する課税権の範囲も、租税条約上、(一)の恒久的施設としての原告に帰せられる利得の考え方と矛盾するものであってはならず、右の利得の範囲に限定されるものである(もっとも、本件船会社が法人税の課税をされないことは(一)のとおりであり、その結果、本件船会社の利得を算定するために、その恒久的施設としての原告の利得の算定をすることはないが、これは、租税条約九条及び外国人等の国際運輸業に係る所得に対する相互主義による所得税等の非課税に関する法律の適用がある結果として、たまたま非課税とされるにすぎないものであるから、通則規定である租税条約八条の適用が全面的に排除されるわけではないのである。)。

しかして、恒久的施設に帰せられる本件船会社の利得算定に当たって控除された費用のうち代理店手数料部分が、原告にとっては売上げに当たり、これが日本法人としての原告に対する日本の課税権の対象となるが、交際費部分を課税権の対象とすることは、恒久的施設としての原告の利得に帰せられないもの(恒久的施設としての原告に帰せられるべき利得を決定する際に経費として控除されたもの)を、それにもかかわらず原告の利得とするものであって、租税条約に反するものである。

6  仮定的主張

仮に、本件交際費が原告に帰属する費用であると解されるとしても、原告が本件船会社から受領する代理店手数料は、本件船会社の運送代金収入の五パーセントとされているのであるから、本件交際費支出の効果として集荷等の増大があった場合も、これによって原告に生ずる収入の増加は、本件船会社に生ずる収入増加の五パーセントにすぎない。したがって、本件交際費中、原告に帰属する部分は、五パーセントを限度とするものと解すべきである。

六  原告の主張に対する被告の認否

1(一)  原告の主張1の(一)のうち、本件交際費が、原告と本件船会社との海運代理店契約に基づき原告が船荷の集荷、船舶の配船及び寄港等の港湾関係事項並びに運賃同盟関係の円滑化のために行った接待行為の費用であること並びにかかる接待行為が原告の設立後本件船会社の従前からの顧客を被接待者として継続されてきたことは認める。原告の設立に伴って本件船会社が従前獲得していた顧客を維持するために接待行為を継続する必要があったこと及び原告において従前と概ね同一の規模で接待行為を継続してきたことは不知。その余は争う。

(二)  同(二)は争う。

(三)(1)  同(三)の(1) のうち、本件交際費が、船荷の集荷、船舶の配船及び寄港等の港湾関係事項並びに運賃同盟関係の円滑化のために原告が行った接待行為に支出されたものであること並びにその大部分は船荷の集荷のための接待行為に係るものであることは認め、その余は争う。

(2) 同(2) ないし、同(4) は争う。

(四)  同(四)の(1) は不知。同(2) 及び(3) は争う。

2(一)  同2の(一)は認める。

(二)(1)  同(二)の(1) のうち、原告が昭和四八年九月期及び昭和四九年九月期において、交際費を自己の経費として計上していたことは認め、その余は不知。

(2) 同(2) のうち、昭和五〇年二月二六日に本件契約が締結されたことは認め、その余は争う。

(3) 同(3) は争う。

(4) 同(4) は争う。

(三)  同(三)のうち、海運代理店が支出した交際費を船会社が負担することが日本における海運代理店業界の一般の慣行であることは争い、その余は不知。

3(一)  同3の(一)は認める。

(二)  同(二)のうち、措置法通達六二(一)-一八の(1) 並びに同通達六二(一)-一二の(4) 及び(5) が原告主張の定めをしていることは認め、その余は争う。

(三)  同(三)は争う。

(四)  交際費等とは、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為を行った法人が支出した費用をいうものであることは、措置法六二条三項によって明らかなところであり、課税実務上も、かかる接待等の行為を行い、これに係る費用を支出した法人にその支出効果が帰属すると認められる場合は、支出者である法人の交際費等として課税処理がされるのが原則であり、二以上の法人が共同してかかる接待交際行為をして、その費用を分担した場合においても、それらすべての法人が分担割合に応じて交際費等を支出したものとされる(措置法通達六二(一)-一八)。また、措置法通達六二(一)-一二の(5) は、昭和三六年に定められたものであるが、当時は、家庭用電気製品業界において、猛烈な販売競争のため、小売店組織の拡大強化が図られていて、小売店に対する接待行為が製造業者にとって販売戦略上の重要事項に属し、製造業者が卸売業者の行う小売店に対する接待行為に対し費用を負担するに止まらず、個々の接待行為に直接かつ仔細に関与していたという社会的背景があり、課税庁の従前からの考え方によっても、かかる状況の下に、製造業者が卸売業者と協賛、共催の形態で実施した接待行為のために支出した全部又は一部の費用は、たとえ支出の窓口が卸売業者であるとしても、製造業者が小売店に対する接待行為のために支出したものとして、税法上、交際費等損金不算入制度の適用を受けるべきであるから、通達をもって、旅行、観劇等の非日常的な接待行為について、製造業者を実質的な行為者ととらえ、これに対して、交際費等損金不算入制度を適用することを明確にしたものである。

措置法六二条の立法趣旨及び措置法通達六二(一)-一二の(5) の定められた社会的背景等に照らすと、複数の法人が関与する交際費について当該法人の交際費と認めるためには、各法人が実質的行為者であり、接待行為を共同でしたと評価し得る態様での行為が必要であるというべきであるところ、この場合に、接待行為に係る費用を負担したが、その関係者がその支出行為に直接加わらなかった法人が、接待行為の実質的行為者であるというためには、少なくとも、次の各要件を全部満たす必要があるといわなければならない。

(1)  共同でされる接待行為が特定され、事前に当該交際費の費用負担につき全法人による協議、約束があること

(2)  当該法人が当該特定の接待行為の企画、立案に参画し、あるいは、少なくとも、認識、了解していたこと

(3)  被接待者が当該法人からも接待されているとの認識を有すること

(4)  接待行為による利益が当該法人に帰属していること

本件においては、本件船会社が、個々の具体的な接待行為についての企画、立案に直接関与していないのみならず、これらを事前に了知することもなく、被接待者においても本件船会社の接待であることを認識していない実情にあり、かつ、個々の具体的な交際費の限度額すら定めることなく、単に親会社が日本における交際費を負担する旨の約定を結び、年間予算額を定めたにすぎないのであるから、右の各要件をいずれも充足していないというべく、したがって、本件船会社を、個々の具体的な接待行為の実質的行為者と評価することは到底できないものである。

4(一)  同4の(一)のうち、本件船会社が原告を含む子会社との間で全世界的に行っている慣行は日本の税法を解釈適用する際の基本的な前提事実として重視すべきであるとの主張は争い、その余は不知。

(二)  同(二)のうち、運賃同盟の海運代理店に関する規約の内容は不知。その余は争う。

5(一)  同5の(一)のうち、租税条約上、オランダの法人に対する日本の課税権は、当該法人の利得のうちの恒久的施設に帰せられる部分についてしか及ばないこと、恒久的施設に帰せられる利得を決定するに当たっては、経営費及び一般管理費を含む費用でその恒久的施設のために生じたものは、その恒久的施設が存在する国において生じたか又は他の場所で生じたかを問わず、経費に算入することが認められるものとされていること並びに本件船会社の所得に対する法人税の課税はされないことは認め、その余は争う。

(二)  同(二)のうち、原告が日本法人であり、日本が原告に対して課税権を有すること及び本件船会社の所得に対する法人税の課税はされないことは認め、その余は争う。

(三)  租税条約八条は、同条約上の一方の国が他方の国の企業(日本にとってオランダ法人である本件船会社)に対し課税をする場合の規定である。したがって、同条約九条により本件船会社に対する課税がされない場合には、原告が同条約上の恒久的施設であるか否かを検討すること自体が無意味であり、日本が日本法人である原告に対し、法人税法に基づいて課税する場合に原告が恒久的施設であると否とを問わず課税が制限されることがないのは当然である。また、同条約八条三項は、場所的関係を問わず、恒久的施設のために生じた経営費及び一般管理費を含む費用について経費に算入することを認めたものにすぎず、その計算方法についてまで定めたものではないから、その計算は当然に法人税法に基づいて行われるもので、したがって、恒久的施設の利得(所得)の計算には交際費等損金不算入制度の適用があるのである。

6  同6は争う。

第三証拠関係〈省略〉

理由

一  請求の原因1及び2の各事実は当事者間に争いがない。

二  抗弁1の(一)の(2) のイのうち、原告が昭和五〇年九月期に四八九四万〇七〇四円を本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させたこと、同(二)の(2) のうち、原告が昭和五一年九月期に六三六一万一〇〇二円を本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させたこと、同(三)の(2) のうち、原告が昭和五二年九月期に六三七八万三三一四円を本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させたこと、同(四)の(2) のうち、原告が昭和五三年九月期に五八五七万一一二〇円を本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させたこと、同(五)の(2) のうち、原告が昭和五三年一二月期に二二二三万一九一六円を本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させたこと、同(六)の(2) のうち、原告が昭和五四年一二月期に五九二四万〇六六一円を本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させたこと、同(七)の(2) のうち、原告が昭和五五年一二月期に六二二一万〇〇〇五円を本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させたこと、同(八)の(2) のうち、原告が昭和五六年一二月期に同アの三八一二万八三五三円について、本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をし、また、同イの二三四四万八四八七円について、本件船会社から得た資金を入金した本件船会社名義の非居住者自由円預金口座から原告の帳簿を通すことなく直接引き出して支出し、いずれも本件船会社に負担させたこと、同(九)の(2) のうち、原告が昭和五七年一二月期に同アの一〇万円について、本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をし、また、同イの六五六〇万五七一一円について、本件船会社から得た資金を入金した本件船会社名義の非居住者自由円預金口座から原告の帳簿を通すことなく直接引き出して支出し、いずれも本件船会社に負担させたこと、同(一〇)の(2) のうち、原告が昭和五八年一二月期に同アの三万三〇〇〇円について、本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をし、また、同イの五六四八万九三二六円について、本件船会社から得た資金を入金した本件船会社名義の非居住者自由円預金口座から原告の帳簿を通すことなく直接引き出して支出し、いずれも本件船会社に負担させたこと、以上の事実は当事者間に争いがないところ、被告は、右各支出金額(本件交際費)が原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告に帰属すべき交際費であり、これを本件船会社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当する旨主張し、他方、原告は、本件交際費が原告に帰属することを争い、本件交際費は、本件船会社に帰属するものである旨主張するので、まず、この点について判断する。

1  抗弁2の(一)の(1) の事実、同(二)の(1) のうち、本件交際費が、原告の従業員が取引先関係者等に対する供応接待として、食事、ゴルフ等を共にするために支出した飲食代金、プレー代金その他の費用であり、金額的には船荷獲得関係等の集荷業務に関連して荷主となるべき企業関係者を接待の相手方としたものがその大部分を占めていること、具体的な各接待行為が、原告の各本支店の従業員のする接待行為の申請に基づいて、当該各本支店長又は副支店長の与える接待の相手方、接待の態様、支出金額、支出時期等についての承認によって決定され、その実行に際しては原告の従業員が接待行為に当たり、これに要した費用として支出される金額が本件交際費を構成すること、同(三)の(1) 及び(2) の事実並びに原告の主張2の(一)の事実は当事者間に争いがなく、右各事実及び前記一の事実に〈証拠〉を総合すると、次の事実を認めることができる。

(一)  原告は、ローヤル・インターオーシャン社の日本支店を、同社の現地支店法人化の方針により分離独立させて、昭和四八年五月八日に日本法人として設立されたものであり、本件船会社と海運代理店契約を締結し、本件船会社のために、〈1〉入出港の手配、船用品の積込み、船舶修理の手配、運賃の受取り、船荷証券の発行等の船主関係及び運航関係の業務、〈2〉船荷の獲得、荷主との間の連絡等の集荷業務、〈3〉集中会計、船舶の運航、市場開拓関係の調整、運賃同盟(特定の航路に船舶の運航を行う船会社を加盟者とし、加盟船会社の共通の利益の確保を目的として各航路毎に結成される団体)関係事項等の業務を行うことを主たる営業内容として、概ね、東京及び大阪の各支店において、船荷の獲得、荷主との連絡及び各支店への集荷状況の連絡等の主として集荷業務を、横浜、名古屋及び神戸の各支店において、同様の集荷業務のほか、入出港の手配、船用品の積込み及び船舶修理の手配等並びに運賃の受取り及び船荷証券の発行等の船主関係及び運航関係業務を、東京本店において、これらの総括及び本件船会社との連絡並びに運賃同盟関係事項等の業務をそれぞれ担当して行っていた。なお、ローヤル・インターオーシャン社は、原告の設立により日本に支店等の営業施設を有しないこととなり、原告の行う右各業務は、概ね、ローヤル・インターオーシャン社の日本支店当時の業務内容を引き継ぐものであった。

(二)  原告は、その設立当初、本件船会社との間で、交際費の負担者に関する何らの取決めもしておらず、昭和四八年九月期に支出した交際費一一七五万〇二三二円及び昭和四九年九月期に支出した交際費四五四五万〇五五一円については全額原告負担のまま原告に帰属する交際費等とする経理処理をして、法人税の申告に及んだ(ただし、昭和四九年九月期の交際費等の金額は、更正により五二五四万九八五四円とされた。)。

しかして、原告は、本件船会社との間の海運代理店契約に基づく各業務を行うに当たって、日本の一般的な慣行上、業務の円滑な遂行を図るために、当該業務の相手方等の関係者と飲食、ゴルフ等を共にするにいわゆる接待行為を行っており、特に、本件船会社の運航する船舶で運送すべき船荷を獲得する集荷業務は、本件船会社の海運代理店としての原告の事業における比重が大きかったところ、右業務に関しては、本件船会社を含む国内国外の船会社間の競争が激しく、これに伴い、これらの船会社又はその海運代理店の行う荷主となるべき貿易会社、商社その他の企業の関係者に対する接待行為も盛んで、これに伍して船荷を獲得するためには、原告としても荷主に対する接待行為をおろそかにすることはできなかったが、かかる荷主に対するものを含む各接待行為に要する多額の交際費を、本件船会社との間の海運代理店契約に基づく、輸出の場合には運賃の五パーセント、輸入の場合には運賃の二パーセントに相当する額の代理店手数料収入でまかなうことは困難であった。そのため、原告は、昭和四九年中に本件船会社に対し、原告が支出する交際費を同社が負担するよう申し入れ、その後、本件船会社との間の数度の協議を経た上、昭和五〇年二月二六日に本件船会社との間で、日本における、〈1〉集荷、〈2〉船舶の配船、寄港等、〈3〉運賃同盟、〈4〉船客業務に関する交際費を本件船会社が負担することとし、かつ、その負担の開始を昭和五〇年九月期の期首である昭和四九年一〇月一日に遡及させて実施することを内容とする本件契約を締結した。そして、本件契約に基づくものとして、昭和五〇年九月期以降、本件交際費について、その支出を本件船会社に対する立替金とする経理処理を行い、さらに、昭和五六年一二月期の途中である同年八月以降は、本件船会社から得た本件交際費を、本件船会社名義の非居住者自由円預金口座に入金して、原告の帳簿を通すことなく、右口座から直接引き出して支出する方法をも取り入れて、本件交際費を本件船会社の負担とする経理処理を行ってきた。

(三)  本件交際費の使途は、主として、集荷関係、船舶の配船及び寄港等の港湾関係並びに運賃同盟関係に係る取引先等の関係者に対する各接待行為の費用(ただし、港湾関係の接待行為中には、本件船会社に関わる船舶が日本に寄港した際の船長及び上級船員に対するものも含む。)であるが、その他に、昭和五〇年九月期を除き、集荷関係に関連して中元及び歳暮等の贈答行為の費用の支出も含まれ、さらに、右いずれの関係にも含まれない本件船会社又は原告の親会社の関係者が来日した際の接待行為の費用の支出も含まれている。各支出の内訳は、集荷業務に関連して荷主となるべき企業関係者を相手方とした接待行為の費用の支出が最も多く、昭和五一年ないし昭和五三年各九月期並びに昭和五四年及び昭和五五年各一二月期において約八〇ないし八四パーセントに達し(昭和五〇年九月期は約九五パーセント、昭和五三年一二月期は約七五パーセント)、次いで、贈答行為の費用が昭和五一年ないし昭和五三年各九月期並びに昭和五四年及び昭和五五年各一二月期において約一二ないし一四パーセント(昭和五三年一二月期は約二一パーセント)を占め、港湾関係、運賃同盟関係及び本件船会社等からの来客に係る各接待行為の費用はいずれも一パーセント未満から三パーセント程度にすぎない。なお、本件契約の前後から、船客業務は事実上行われなくなったため、これに係る接待行為及び交際費支出は存在しない。

(四)  本件船会社の負担すべき本件交際費の額には、各年ごとに年間支出額の上限が設けられていたところ、右年間交際費額の上限の決定に当たっては、前年中に原告から本件船会社に対し、原告の要求に係る年間交際費額並びにその理由及び各本支店ごとの内訳を記載した予算書が送付され、本件船会社において、これに対する検討を行い、必要があれば原告に対する質問などを経た上で、本件船会社の負担すべき年間交際費額の上限を決定して、原告に通知していた。

(五)  本件交際費に係る荷主その他の取引先関係者に対する具体的接待行為は、基本的に、原告の各本支店の当該取引先を担当する従業員がこれに当たるものであるところ、右具体的接待行為は、右原告の担当者において企画、立案し、概ね事前に本件船会社の定めた様式のエンターテイメントフォーム(交際費申請書)の申請欄に、当該接待行為の態様、日時、場所、接待の担当者、被接待者の所属企業名、氏名、役職、予算見積額等を記入の上、これをその所属する本支店の各本支店長又は副支店長に提出して申請し、その承認を得ることにより決定されて、実行に移され、その後、当該担当者において、右エンターテイメントフォームの結果報告欄に、被接待者及び接待者側の各人数、実費等を記入して各本支店長又は副支店長に提出することにより、接待行為実行の結果の報告がされるが、接待行為のうち、コーヒー、軽食等を共にする場合等、ごく少額の費用でまかなえるものについては、その都度エンターテイメントフォームを作成することはせずに、各担当者の判断で接待行為を実行して費用支出をした上、各本支店ごとに、毎月各担当者からこれに要した当該月分の費用の報告を受け、これを取りまとめて一括したエンターテイメントフォームを作成して右費用を計上していた。また、本件交際費に係る中元、歳暮等の贈答行為は、各本支店ごとにその贈り先及び費用等を決定し、エンターテイメントフォームは作成せずに、担当者が一括して贈答品を購入し、原告の名義で送り主に発送していた。

(六)  原告においては、その従業員が具体的接待行為を行うについては、その費用について本件交際費の支出として本件船会社に負担させるものであると、その費用を原告自身あるいは他の船会社が負担するものであるとを区別しないで、原則として右エンターテイメントフォームを用いた申請、承認、結果報告をさせており、当該接待行為に係る費用につき、本件交際費の支出として本件船会社の負担とするか否かは、第一次的に当該支店の支店長又は副支店長において判断して当該接待行為に係るエンターテイメントフォームに記入し、さらに、毎週各支店から、一週間分のエンターテイメントフォーム及び領収書類に全部の送付を受ける本店の経理担当者において、その記載、特に被接待者の所属企業名、役職等に基づいて仕訳し直し、原告としての最終決定をしていた。そして、原告の本店では、毎月、右のように本件船会社負担分と原告負担分とに仕訳した一か月分の交際費の合計を、各本支店別、負担者別、使途(集荷関係、港湾関係等)別、接待行為の態様別に分類して明細書を作成し、これにエンターテイメントフォーム及び領収書類を添付して本件船会社に送付することにより、本件交際費の支出についての報告としていたが、右報告に関し、特定の接待行為について本件船会社から原告に対し質問がされることもあり、さらに負担者の仕訳につき本件船会社の了承が得られず、本件船会社の負担から原告負担に変更されたものも僅かながら存在した。なお、中元、歳暮等の贈答行為については、年間の予算の枠内で実行されれば、本件船会社の右のような事後審査を経ることはなかった。

(七)  原告の行う本件交際費に係る具体的接待行為の相手方である荷主側関係者においては、一般に、国際運送事業取引に関し外国船会社の海運代理店である原告から接待を受けているとの認識を有し、本件船会社から接待を受けている旨の認識はないが、当該接待行為に係る交際費の負担者についてまでは意識せず、関心も有していないのが通常である。

(八)  国際間の船舶運航事業を営む外国船会社の日本における海運代理店においては、船会社の加盟する運賃同盟の規約により、代理店手数料が船会社の運賃収入に対する一定料率以下に制限されているため、その代理店事業の内容が集荷業務を中心とするものにあっては、集荷業務遂行のため支出を要する交際費を、当該代理店手数料でまかなうことが困難であって、船会社に代理店手数料とは別に交際費相当分の負担をしてもらう例が多いところ、その交際費負担の額については、原告と本件船会社の例のように各年ごとに一定金額を定める場合のほか、実費による場合や、船会社の運賃収入に対する一定料率を代理店手数料に上積みするような方式による場合もある。

2(一)  ところで、措置法六二条三項(昭和五七年法律第八号による改正前は同条四項)は、同条一項の損金不算入の処理を行うべき交際費等の範囲について規定するところ、その適用によって当該法人において損金不算入の処理を行うべきこととなる交際費等については、それが当該法人の支出に帰することを当然の前提としているから、同項に該当する場合、すなわち、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものについては、これを当該法人の支出に帰する交際費等とすべきものである。換言すれば、法人が当該支出に係る交際費等による具体的な接待、贈答等の行為の主体であり、当該交際費等に係る具体的な接待、贈答等の行為が当該法人の事業に関連して、その業務遂行の円滑化のために行われた場合には、当該交際費等は、当該法人の支出に帰すべきものというべきである。このことは、企業の行う接待、贈答等の具体的な交際行為が、直接にはその接待者、贈与者等と被接待者、受贈者等との間の人的な繋がりの構築、維持又は強化を図ることにより、ひいて業務の円滑な遂行に資することを目的とする活動であり、それ故に、具体的な交際行為の効果は、当該接待者、贈与者等に、その業務の円滑な遂行という形態で生ずるものというべきことに照らしても、首肯し得るものということができる。

(二)  しかるところ、1の事実関係に徴すれば、

(1)  本件交際費に係る具体的な接待行為、贈答行為は、原告の各本支店においてその企画、立案がされて、実行が決定されるものであり、接待行為については、原告の従業員によって実行され、その相手方においても、接待行為自体は海運代理店である原告から受けているものと認識しているのであり、また、贈答行為については、送り主を原告の名義として実行されているのであるから、右の接待行為、贈答行為の主体が原告であることは明白である。

(2)  また、本件交際費に係る具体的な接待行為、贈答行為の相手方は、原告が海運代理店契約を締結した相手方である本件船会社の関係者(本件船会社に関わる船舶の船長等及び原告の親会社の関係者を含む。)であるか、又は、一のとおり、原告が本件船会社との間の海運代理店契約に基づいて、その海運代理店としての事業の内容とする集荷業務、船舶の配船、寄港等の港湾関係業務若しくは運賃同盟関係業務に係る取引先等の関係者であって、とりわけ、本件船会社の海運代理店としての原告の事業における比重の大きい集荷業務に関し、船会社間の激しい競争を背景として、荷主となるべき貿易会社、商社その他の企業の関係者を相手方とするものがその大半を占めているのである。そうすると、右の具体的な接待行為、贈答行為は、いずれも原告の事業に関連して、その業務遂行の円滑化のために行われていることも明らかである。

(3)  したがって、本件交際費は原告に帰属するものといわなければならない。

3(一)  原告は、本件交際費に係る接待行為の相手方である荷主等は、本件船会社との間で運送契約関係を有するに至るものであるから、集荷等の業務及びそのための接待行為は、本来は本件船会社の業務であり、本件船会社から集荷等の業務の委任を受け、本件船会社に代わってこれを行った原告は、本来、委任事務処理のための必要費として交際費の償還を求め得る地位にあるところ、本件交際費は、原告と本件船会社との本件契約により、これを本件船会社の契約上の業務としたにすぎないものであるから、本件交際費は本件船会社に帰属するものである旨主張する。

しかしながら、仮に、集荷業務を処理するために原告が行う接待行為に要する費用が、本来は委任事務処理の必要費に該当して、本件船会社に対しその償還を求め得るものであるとしても、それは、単に、原告が本件船会社に対し私法上の請求権である費用償還請求権を取得するということを意味するにすぎず、そのことから当然に、右接待行為に要する費用としての本件交際費が、税法上本件船会社の支出に帰すべきものになるということはできない。

したがって、原告の右主張は失当である。

(二)  原告は、本件交際費は、船荷の集荷、船舶の配船及び寄港等の港湾関係事項並びに運賃同盟関係の円滑化のために行った接待行為に支出されたものであるところ、かかる接待行為の効果は本件船会社に帰属するものであるとも主張する。

しかしながら、1の(一)のとおり、原告は、本件船会社との間の海運代理店契約によって、本件船会社のために、船荷の獲得、荷主との間の連絡等の集荷業務、入出港の手配、船用品の積込み、船舶修理の手配、船舶の運航、運賃同盟関係事項等の業務を行うことを、自己の事業内容としており、原告の主張する船荷の集荷、港湾関係事項及び運賃同盟関係の各業務は、右の原告の事業内容に含まれるものであるから、かかる業務の円滑な遂行を図る目的をもって、これに関係する荷主等の者を相手方として原告自身が行った接待行為の効果は、直接的には、かかる業務を自己の事業内容とする原告に帰属するものというべきである。なるほど、原告主張のとおり、右各業務は本件船会社の運賃収入の維持、増加、本件船会社の行う船舶運航の円滑化及び本件船会社の運賃同盟関係の活動上の利益に寄与し、その効果は最終的には、その大部分が本件船会社に及ぶものであると認められるが、それは、本件交際費に係る接待行為の直接の効果ではなく、海運代理店契約により右各業務を自己の事業内容とした原告の、右接待行為の実行を含めた事業活動の成果であるにすぎないというべきである。

よって、原告の右主張も失当である。

(三)  原告は、本件交際費の支出については、本件船会社による合理的で可能な限りの十分な管理が行われている上、本件船会社から原告の枢要ポストに派遣された者を通じて原告の組織の内部からのチェックをも行っているのであるから、基本的、窮極的には、本件船会社の判断と責任において支出されたものであると主張する。

しかして、年間の本件交際費の額の決定、具体的な接待行為に際しての事前の申請手続並びに事後の報告及び本件交際費の支出の決定の手続、本件交際費に係る贈答行為の決定の手続並びに本件船会社による本件交際費支出についての事後審査については、1の(四)ないし(六)のとおりであり、また〈証拠〉によれば、原告の代表者その他の重要な役職には本件船会社から派遣された者が就任していることが認められる。そして、右各事実によれば、本件船会社が年間の本件交際費の枠の設定について最終的な決定権を有し、また、本件交際費の個々の支出についても事後的に審査し得る体制を整えていることが認められるが、具体的な本件交際費の支出又はこれに係る個々の接待行為、贈答行為に対する本件船会社の関与は右の限度に止まるのであって、かかる程度の関与をもって、本件船会社が、本件交際費に係る具体的な接待行為、贈答行為の主体であるといえないことはもとより、右の個々具体的な接待行為、贈答行為に関与したといえないことも明らかである(なお、〈証拠〉によれば、原告のした接待行為のうちには、本件船会社の従業員ないしその関係者が原告の従業員と共に出席した例が若干存在することを認めることができるが、さらに進んで右各接待行為の企画、立案及び実行の決定等に本件船会社が具体的に関与した事実を認めるに足りる証拠は存在しないところ、単に、その従業員ないし関係者が出席したことのみをもって、本件船会社が右各接待行為に関与したものと認めることはできない。)。

原告は、右の点に関して、個々の具体的な接待行為に逐一本件船会社の関与を求めるのは不可能である上、営業的にも拙劣な方法であるから、本件契約により、原告に一定の枠内で細目についての裁量権を与えて交際費支出を委任したものであると主張し、また、一定の範囲内において処理を代理人の裁量に委ねることは代理制度自体の予定しているところで、代理人の行為に代理人の裁量による部分があったからといって、それが本人のための行為ではなく、代理人自身のための行為であるとするのは代理制度の趣旨に反するものであるとも主張する。

右主張は、必ずしもその趣旨が分明ではないが、仮に、本件交際費に係る接待行為の効果が直接本件船会社に及ぶとの趣旨であれば、(二)のとおり失当である。また、原告の行う本件交際費に係る接待行為自体が本件船会社から委任されたものであるとの趣旨であれば、2の(二)のとおり、本件交際費に係る具体的な接待行為は、原告が本件船会社のために行うべき集荷その他の業務の円滑化を図るために実行されているものであるが、右業務自体は、原告と本件船会社との海運代理店契約に基づいて原告が自己の事業の内容とするものであるというべきところ、企業の行う具体的な接待行為は、その接待者等と被接待者等との間の人的な繋がりの構築、維持又は強化を図ることにより、ひいて業務の円滑な遂行に資することを目的とする活動であって、当該接待者等に、その業務の円滑な遂行という形態でその効果が生ずるものというべきであり、それ故に、原告がした具体的な接待行為は、原告が自己の事業に関連してしたものであると認められるのであるから、やはり、失当であるというほかはない。

(四)  原告は、また、租税実質主義の立場をとる例として、措置法通達六二(一)-一八の(1) 並びに同通達六二(一)-一二の(4) 及び(5) を挙げた上、租税実質主義の立場からは、本件交際費に係る接待行為の相手方である荷主等が本件船会社の直接の取引先なのであるから、本件交際費を本件船会社が負担する旨の本件契約は税法上も効力を有し、本件交際費は本件船会社に帰属する旨主張し、また、本件交際費に係る接待行為の相手方が原告の取引先であり、したがって、本件交際費が原告の業務関連費用であるとしても、右接待の効果として集荷量が増大すれば、本件船会社の運賃収入が増大する関係にあることが明らかである以上、本件交際費は本件船会社に帰属するものである旨主張する。

しかしながら、措置法通達六二(一)-一八の(1) は、二以上の法人が接待等の行為を共同して行い、その費用を分担した場合に、各法人についてその分担割合に応じて交際費等の支出があったものとするものであるから、交際費等が当該接待等の行為を実行した者に帰属することを明らかにしたものであって、本件船会社が具体的な接待行為の現実の共同実行者でないことはもとより、そもそも右接待行為に関与した者とすらいえない本件においては、右通達ないしその根拠となる考え方が適用される根拠を欠くものである。

また、措置法通達六二(一)-一二の(5) は、卸売業者が小売業者を旅行、観劇等に招待した費用の全部又は一部を製造業者等が負担した場合のその負担額が製造業者等の交際費等の金額に含まれるとしたものであり、同通達六二(一)-一二の(4) は、卸売業者等がその得意先等を旅行、観劇等に招待した費用をその者の交際費等に該当するものとしつつ、同通達六二(一)-一二の(5) に対応して、右通達により製造業者等の交際費等となる部分を卸売業者の交際費等から除外するとしたものである。しかして、原告は、右通達の例においては、製造業者は被接待者である小売業者と直接の取引関係がなく、当該接待行為については反射的効果を受けるのみであるが、卸売業者と小売業者との間の取引量の増大が事実上、経済上、製造業者の利益に関連を有することから、卸売業者の接待行為に製造業者が、費用負担した場合の負担額を製造業者の交際費と認めたものである旨主張するが、同通達六二(一)-一二及び同通達六二(一)-一八の各定めに照らし、また、前記2の(一)で述べたこと等を併せ考えると、同通達六二(一)-一二の(5) により製造業者等の負担額がその交際費等とされる根拠となる事由を、原告主張の事実関係の存在に止まらず、これに加え、製造業者等が単に費用を負担するのみではなく、交際費等の支出の直接の当事者にはならなかったとしても、当該旅行、観劇等の招待についてその共同実行者に準ずる程度の関与をしたことに求めるべきであると解されるから、右通達の適用のあるのは、少なくとも、製造業者等が当該具体的な旅行、観劇等の招待につき、その企画、立案に関与し、あるいはこれを事前に認知して了解をし、かつ、事前にその費用負担について卸売業者と具体的な取決め等をしていた場合であることを必要とするものというべく、したがって、本件船会社が原告の行う具体的な接待、贈答等の行為に関与した者とすらいえない本件においては、右通達ないしその根拠となる考え方が妥当する根拠をやはり欠くものであるといわなければならない。

原告は、さらに、本件交際費に係る接待行為についての被接待者の直接の取引先が本件船会社であり、あるいは、本件交際費に係る接待行為の効果が本件船会社の運賃収入の増大であるとして、租税実質主義の考え方に基づけば、本件交際費は本件船会社に帰属するものである旨主張するが、(二)のとおり、商社、貿易会社等の荷主をして本件船会社との運送契約に至らせる集荷業務等が本件船会社との海運代理店契約に基づく原告の業務なのであり、本件交際費に係る接待行為、贈答行為は、これらの原告自身の業務の関係者である荷主等を、接待、贈答等の行為の相手方として、原告自身によって企画、実行され、かつ、本件船会社は、具体的な接待行為、贈答行為に関与すらしないのであるから、本件交際費を全額原告の帰属とすることが、租税実質主義に何ら抵触するものではない。

したがって、原告の右主張も失当である。

(五)(1)  原告は、本件船会社が、世界各国に有する海運代理店業を営む系列の子会社二六社に対し、原告に対すると同様の年間予算の承認、統一様式のエンターテイメントフォームによる接待行為のチェック、月次明細書及び年次明細書等によるチェックを行い、その上で、交際費を本件船会社の経費とする経理処理を世界共通に行っていると主張した上、このような本件船会社が原告を含む子会社との間で全世界的に行っている慣行は、本件につき、日本の税法を解釈適用する際の基本的な前提事実として重視されなくてはならない旨主張する。

しかしながら、仮に、本件船会社が、主張の世界各国の系列子会社との間で、交際費につき主張の経理処理をしているとしても、原告は、日本法によって設立された日本法人であり、原告に対する法人税課税は、日本の税法によって行われるものであるところ、本件交際費が原告に帰属するものであって、その受入れが原告の収入となり、その支出が本来は原告の損金となるべきものであるか否かについては、純粋に日本の税法の解釈適用の問題であるから、必ずしも税制の内容を日本と同じくしない諸外国における取扱いが、かかる場合における日本の税法の解釈適用に影響を与えるべきものとは到底解されず、この理は、特別の条約等により日本の税法の適用とは異なる取扱いがされるべき旨が定められている場合を除いては(租税条約にかかる特別の定めがあるとは解されないことは、後記のとおりである。)、原告の親会社又は海運代理店契約の相手方である船会社がたまたま外国法人であり、原告と同様の海運代理店を営む系列子会社を世界各国に有するものであるとしても、同様であるといわなければならない。

よって、原告の右主張も失当である。

(2) また、原告は、海運代理店に対し最高限五パーセントの手数料以外のいかなる支払いをも禁じた運賃同盟の規約の下においても、右の限度の手数料収入では、集荷関係に伴う交際費を到底まかなうことができないことから、海運代理店が外国船会社のために支出した交際費を船会社が負担することが業界一般の慣行である上、これが右規約に違反するものとはされず、交際費は船会社の経費と考えられている旨主張した上、海運業界内で外国船会社の海運代理店が船会社との間で交際費の負担をどのように処理しているかという点も租税実質主義に従って課税する際の重要な基礎的前提事実となるべきである旨主張する。

しかして、国際間の船舶運航事業を営む外国船会社の日本における集荷業務を中心とする海運代理店においては、船会社の加盟する運賃同盟の規約により代理店手数料が船会社の運賃収入に対する一定料率以下に制限されているため、集荷業務遂行のため支出を要する交際費を当該代理店手数料でまかなうことが困難であって、船会社に、代理店手数料とは別に、実費による、あるいは一定金額若しくは船会社の収入に対する一定料率等の金額として定められた交際費相当額の負担をしてもらう例が多いことは、1の(八)のとおりであり、また〈証拠〉によれば、かかる交際費の負担が必ずしも運賃同盟の規約違反とはされていないことが認められるところ、かかる事実関係によれば、日本における集荷業務を中心とする外国船会社の海運代理店の業界においては、外国船会社から、交際費支出相当分として、一定の方式で定められた金員を受け入れる慣行が存在することを窺い得ないわけではない。

しかしながら、かかる慣行が存在するとしても、このことは、交際費支出相当分について、外国船会社が実質的にこれを負担するということにすぎず、さらに進んで、海運代理店が受け入れた交際費支出相当分の金員の経理処理に関して、交際費が外国船会社の支出に帰すべきものであり、当該海運代理店の支出に帰すべきものではないとして、これを当該海運代理店の収入に計上せず、その支出についても、交際費等の損金不算入の扱いを含め、損金としての取扱いをしないことが右業界において一般的であり、かつ、税務当局においても従来からそれを容認してきたというような事実の存在を認めるに足りる証拠は存在しないから、被告が、本件交際費を原告に帰属するものと認めて、本件船会社から受け入れた本件交際費相当分の金員を原告の収入とし、本件交際費を措置法の規定する交際費等損金不算入の対象としたことが、業界の慣行に反するということはできない。

したがって、原告の右主張も理由がない。

(六)  原告は、原告の所得の算定に当たって交際費の損金不算入を定めた措置法の規定を適用することが租税条約に違反するものである旨主張する。

原告の右主張は、その趣旨が必ずしも分明でないところもあるが、要するに、日本が原告に対する法人税の課税において、交際費等損金不算入制度を適用し、損金のうちの交際費等の部分に課税することは、租税条約八条一項に違反するというものであると解されるところ、同項は、日本又はオランダの一方の国の企業の利得に対しては、その企業が他方の国にある恒久的施設を通じて当該他方の国において事業を行わない限り、当該一方の国においてのみ租税を課することができる旨、及び、一方の国の企業が他方の国にある恒久的施設を通じて当該他方の国において事業を行う場合には、その企業の利得に対し、当該恒久的施設に帰せられる部分についてのみ、当該他方の国において租税を課することができる旨を定めるものであるから、日本を課税主体とする場合には、オランダの企業の利得に対する日本の課税権の範囲についての規定であることは明らかであり、したがって、本件船会社の所得について日本が法人税を課するとした場合には、その適用が一応考えられることとなるが、他方、同条約九条一項、外国人等の国際運輸業に係る所得に対する相互主義による所得税等の非課税に関する法律一条、同法施行令二条及びその別表によれば、日本は、国際航路における船舶運航の事業を営むオランダの法人である本件船会社に対しては、法人税を課さないこととされているのであるから、結局、本件船会社に対する課税について租税条約八条一項を適用する余地は存在しない。

もっとも、原告は、租税条約九条及び外国人等の国際運輸業に係る所得に対する相互主義による所得税等の非課税に関する法律の適用の結果、本件船会社の利得がたまたま非課税とされるとしても、通則規定である租税条約八条の適用が全面的に排除されるものではないと主張し、かつ、原告が本件船会社の日本にある恒久的施設であるとした上で、恒久的施設の利得を決定するに際して、同条三項により経費に算入することが認められる経営費及び一般管理費を含む費用で恒久的施設のために生じたもののうちには、交際費も含まれるところ、日本法人としての原告に対する課税権の範囲も、同条一項による恒久的施設としての原告に帰せられる利得の考え方と矛盾するものであってはならず、右の利得の範囲に限定されるから、交際費等の損金不算入を定めた措置法の規定にかかわらず、本件交際費の全部が経費に算入されるものである旨主張する。

しかしながら、仮に、租税条約九条一項、外国人等の国際運輸業に係る所得に対する相互主義による所得税等の非課税に関する法律及び同法施行令の適用がないものとして考えた場合においても、既に述べたとおり、租税条約八条一項は、日本を課税主体とする場合においては、オランダの企業の利得に対する課税権の範囲について定めたものであり、恒久的施設の概念も右課税権の範囲を決定するために導入されたものというべきであるから、原告が本件船会社の日本における恒久的施設に当たると否とを問わず、日本法によって設立された日本法人である原告に対する日本の課税権の範囲について、同条約八条一項によって何らかの制約が課されるものでないことは明らかである。すなわち、日本法人である原告に対する法人税課税は、措置法その他関連法令を含む日本の税法によって行われるものであって、このことは、原告が、本件船会社の日本における恒久的施設に当たると否とによって、左右されるものではない。

他に、租税条約上、原告に対する法人税課税につき何らかの制約が課されるものと解すべき条項は見当らない。

よって、原告の右主張も失当である。

(七)  原告は、原告が本件船会社から受領する代理店手数料が、本件船会社の運送代金収入の五パーセントとされていることを理由として、本件交際費支出の効果として集荷等の増大があった場合も、これによって原告に生ずる収入の増加は、本件船会社に生ずる収入増加の五パーセントにすぎないから、本件交際費中、原告に帰属する部分は、五パーセントを限度とするものと解すべきである旨主張するが、右主張が失当であることは、(二)で述べたことにより明らかである。

4  以上によれば、本件交際費は、原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告の支出に帰すべきものと解すべきであり、したがって、かかる交際費支出額を本件船会社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当するものと認められる。

三  そこで、本件の各係争事業年度の原告の所得について検討する。

1  昭和五〇年九月期について

(一)  原告の申告所得金額が別表二の一のIのとおりであることは当事者間に争いがない。

(二)(1)  原告が昭和五〇年九月期にシートレーン社に対する海運代理店業務に関連し、接待、供応のために支出した二五五万五八六九円をシートレーン社に負担させたこと、右交際費は原告に帰属すべきものであり、これをシートレーン社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当し、したがって、右金額を雑収入として計上すべきことは当事者間に争いがない。

(2) 原告が昭和五〇年九月期に本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた本件交際費の額四八九四万〇七〇四円が原告に帰属し、これを本件船会社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当することは二のとおりであるから、右金額は雑収入として計上すべきである。

(3) 右(1) 、(2) によれば、その合計額五一四九万六五七三円を雑収入計上漏れとして所得金額に加算すべきである。

(三)  原告が昭和五〇年九月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額を九一四万五六〇九円として申告したこと、右交際費等の額に、(二)の(1) の二五五万五八六九円及び原告が社交クラブ会費及びゴルフ会費等として支出した二四万〇八〇〇円を加算すべきものであることは当事者間に争いがなく、また、(二)の(2) の本件交際費の額四八九四万〇七〇四円が原告に帰属することは二のとおりであって、措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額に当たるものと認められるところ、右交際費等の額の合計額六〇八八万二九八二円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五〇年法律第一六号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は四四〇一万三六四五円であるから、右金額を所得金額に加算すべきである。

(四)  別表二の一のIIの3ないし5の各金額(役員賞与の損金不算入額、繰延資産の償却超過額、手数料収入計上漏れ)を所得金額に加算すべきことは当事者間に争いがない。

(五)  右(二)の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(三)による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額五一四九万六五七三円を所得金額から減算すべきである。

(六)  別表二の一III の2の金額(事業税の損金算入額)を所得金額から減算すべきことは当事者間に争いがない。

(七)  右(一)ないし(六)によれば、原告の昭和五〇年九月期の所得金額は、一億六二五四万六八二五円となる。

2  昭和五一年九月期について

(一)  原告の申告所得金額(欠損金額)が別表二の二のIのとおりであることは当事者間に争いがない。

(二)  原告が昭和五一年九月期に本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた本件交際費の額六三六一万一〇〇二円が原告に帰属し、これを本件船会社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当することは二のとおりであって、右金額は雑収入として計上すべきであるから、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算すべきである。

(三)  原告が昭和五一年九月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額を九一一万八四一五円として申告したことは当事者間に争いがないところ、(二)の本件交際費の額六三六一万一〇〇二円が原告に帰属することは二のとおりであって、措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額に当たるものと認められるところ、右交際費等の額の合計額七二七二万九四一七円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五一年法律第五号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は五三六七万二六三四円であるから、右金額を所得金額に加算すべきである。

(四)  別表二の二のIIの3の金額(役員賞与の損金不算入額)を所得金額に加算すべきことは当事者間に争いがない。

(五)  右(二)の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(三)による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額六三六一万一〇〇二円を所得金額から減算すべきである。

(六)  別表三の一のI(支出した寄付金額)、IIの1(所得金額仮計申告額)及び4(期末の資本等の金額)並びにIII の2(申告に係る損金不算入額)は当事者間に争いがないところ、(二)ないし(五)の加減算に伴って同表IIの2の金額(所得金額仮計加算額)を加算して昭和五一年九月期の寄付金の損金不算入額を計算すると、同表のとおり、申告に係る損金不算入額が四一万七九八八円過大となるから、右金額を所得金額から減算すべきである。

(七)  右(一)ないし(六)によれば、原告の昭和五一年九月期の所得金額は、三四〇六万六四一七円となる。

3  昭和五二年九月期について

(一)  原告の申告所得金額(欠損金額)が別表二の三のIのとおりであることは当事者間に争いがない。

(二)  原告が昭和五二年九月期に本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた本件交際費の額六三七八万三三一四円が原告に帰属し、これを本件船会社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当することは二のとおりであって、右金額は雑収入として計上すべきであるから、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算すべきである。

(三)  原告が昭和五二年九月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額を九六三万四八三〇円、交際費等の損金不算入額を四四七万九九六二円として申告したことは当事者間に争いがなく、(二)の本件交際費の額六三七八万三三一四円が原告に帰属することは二のとおりであって、措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額に当たるものと認められるところ、右交際費等の額の合計額七三四一万八一四四円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五二年法律第九号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は五五四九万四五一五円であるから、右金額から申告に係る損金不算入額を差し引いた五一〇一万四五五三円を所得金額に加算すべきである。

(四)  右(二)の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(三)による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額六三七八万三三一四円を所得金額から減算すべきである。

(五)  別表三の二のI(支出した寄付金額)、IIの1(所得金額仮計申告額)及び4(期末の資本等の金額)並びにIII の2(申告に係る損金不算入額)は当事者間に争いがないところ、(二)ないし(四)の加減算に伴って同表IIの2の金額(所得金額仮計加算額)を加算して昭和五二年九月期の寄付金の損金不算入額を計算すると、同表のとおり、申告に係る損金不算入額が八五七四円過大となるから、右金額を所得金額から減算すべきである。

(六)  後記のとおり昭和五一年九月期更正は適法であるから、右更正後の原告の昭和五一年九月期の所得金額に対する地方税法七二条の二二所定の標準税率一〇〇分の一二の割合による事業税の額として算出される四〇八万七九二〇円を昭和五二年九月期の所得金額から減算すべきである。

(七)  右(一)ないし(六)によれば、原告の昭和五二年九月期の所得金額は、一六二万一八一〇円である。

4  昭和五三年九月期について

(一)  原告の申告所得金額(欠損金額)が別表二の四のIのとおりであることは当事者間に争いがない。

(二)  原告が昭和五三年九月期に本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた本件交際費の額五八五七万一一二〇円が原告に帰属し、これを本件船会社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当することは二のとおりであって、右金額は雑収入として計上すべきであるから、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算すべきである。

(三)  原告が昭和五三年九月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額を一〇六六万四九六一円、交際費等の損金不算入額を五七二万六二二五円として申告したことは当事者間に争いがなく(二)の本件交際費の額五八五七万一一二〇円が原告に帰属することは二のとおりであって、措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額に当たるものと認められるところ、右交際費等の額の合計額六九二三万六〇八一円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五四年法律第一五号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は五一八七万四六六五円であるから、右金額から申告に係る損金不算入額を差し引いた四六一四万八四四〇円を所得金額に加算すべきである。

(四)  右(二)の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(三)による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額五八五七万一一二〇円を所得金額から減算すべきである。

(五)  別表三の三のI(支出した寄付金額)、IIの1(所得金額仮計申告額)及び4(期末の資本等の金額)並びにIII の2(申告に係る損金不算入額)は当事者間に争いがないところ、(二)ないし(四)の加減算に伴って同表IIの2の金額(所得金額仮計加算額)を加算して昭和五三年九月期の寄付金の損金不算入額を計算すると、同表のとおり、申告に係る損金不算入額が七万七七〇八円過大となるから、右金額を所得金額から減算すべきである。

(六)  後記のとおり昭和五二年九月期更正は適法であるから、右更正後の原告の昭和五二年九月期の所得金額に対する地方税法七二条の二二所定の標準税率一〇〇分の一二の割合による事業税の額として算出される一九万四五二〇円を昭和五三年九月期の所得金額から減算すべきである。

(七)  右(一)ないし(六)によれば、原告の昭和五三年九月期の所得金額は、六八三万二七二五円である。

5  昭和五三年一二月期について

(一)  原告の申告所得金額(欠損金額)が別表二の五のIのとおりであることは当事者間に争いがない。

(二)  原告が昭和五三年一二月期に本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた本件交際費の額二二二三万一九一六円が原告に帰属し、これを本件船会社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当することは二のとおりであって、右金額は雑収入として計上すべきであるから、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算すべきである。

(三)  原告が昭和五三年一二月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額を四三五万九九八九円、交際費等の損金不算入額を三〇八万四七四三円として申告したことは当事者間に争いがなく、(二)の本件交際費の額二二二三万一九一六円が原告に帰属することは二のとおりであって、措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額に当たるものと認められるところ、右交際費等の額の合計額二六五九万一九〇五円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五四年法律第一五号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は二三〇一万〇四二一円であるから、右金額から申告に係る損金不算入額を差し引いた一九九二万五六七八円を所得金額に加算すべきである。

(四)  別表二の五のIIの3の金額(寄付金の損金不算入額)を所得金額に加算すべきことは当事者間に争いがない。

(五)  右(二)の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(三)による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額二二二三万一九一六円を所得金額から減算すべきである。

(六)  後記のとおり昭和五三年九月期更正は適法であるから、右更正後の昭和五三年九月期の原告の所得金額に対する地方税法七二条の二二所定の標準税率一〇〇分の一二の割合による事業税の額として算出される八一万九八四〇円を昭和五三年一二月期の所得金額から減算すべきである。

(七)  右(一)ないし(六)によれば、原告の昭和五三年一二月期の所得金額は、一七五六万三九七九円の欠損金額となる。

6  昭和五四年一二月期について

(一)  原告の申告所得金額(欠損金額)が別表二の六のIのとおりであることは当事者間に争いがない。

(二)  原告が昭和五四年一二月期に本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた本件交際費の額五九二四万〇六六一円が原告に帰属し、これを本件船会社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当することは二のとおりであって、右金額は雑収入として計上すべきであるから、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算すべきである。

(三)  原告が昭和五四年一二月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額を八二二万〇一六六円として申告したことは当事者間に争いがなく、(二)の本件交際費の額五九二四万〇六六一円が原告に帰属することは二のとおりであって、措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額に当たるものと認められるところ、右交際費等の額の合計額六七四六万〇八二七円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五四年法律第一五号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は四四五二万一〇三五円であるから、右金額を所得金額に加算すべきである。

(四)  右(二)の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(三)による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額五九二四万〇六六一円を所得金額から減算すべきである。

(五)  右(一)ないし(四)によれば、原告の昭和五四年一二月期の所得金額は、六七六九万六〇三一円の欠損金額となる。

7  昭和五五年一二月期について

(一)  原告の申告所得金額が別表二の七のIのとおりであることは当事者間に争いがない。

(二)  原告が昭和五五年一二月期に本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた本件交際費の額六二二一万〇〇〇五円が原告に帰属し、これを本件船会社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当することは二のとおりであって、右金額は雑収入として計上すべきであるから、右金額を雑収入計上漏れとして所得金額に加算すべきである。

(三)  原告が昭和五五年一二月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額を一三九六万七三三三円、交際費等の損金不算入額を一一三〇万四二一五円として申告したことは当事者間に争いがなく、(二)の本件交際費の額六二二一万〇〇〇五円が原告に帰属することは二のとおりであって、措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額に当たるものと認められるところ、右交際費等の額の合計額七六一七万七三三八円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五六年法律第一三号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は六七二九万三九五一円であるから、右金額から申告に係る損金不算入額を差し引いた五五九八万九七三六円を所得金額に加算すべきである。

(四)  後記のとおり、昭和五三年一二月期更正及び昭和五四年一二月期更正は適法であり、その結果、繰越欠損金額が減少することとなるから、これに伴って原告の申告に係る繰越欠損金の当期控除額のうち過大となった一〇五五万八〇八六円を所得金額に加算すべきである。

(五)  右(二)の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(三)による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額六二二一万〇〇〇五円を所得金額から減算すべきである。

(六)  右(一)ないし(五)によれば、原告の昭和五五年一二月期の所得金額は、六六五四万七八二二円となる。

8  昭和五六年一二月期について

(一)  原告の申告所得金額が別表二の八のIのとおりであることは当事者間に争いがない。

(二)(1)  原告が昭和五六年一二月期に本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた本件交際費の額三八一二万八三五三円及び原告が本件船会社から得た資金を本件船会社名義の非居住者自由円預金口座に入金して、原告の帳簿を通すことなく右口座から直接引き出す方法により支出した本件交際費の額二三四四万八四八七円が原告に帰属し、これを本件船会社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当することは二のとおりであるから、右各金額は雑収入として計上すべきである。

(2) 原告が昭和五六年一二月期に、その支出した交際費の金額のうち三三〇万円を、トリコラロイド社との間で締結した昭和五六年二月一日付け協約書に基づき、同社に対する立替金の名目で支出した上、同社に対する預り運賃の一部で相殺する処理をしてトリコラロイド社に負担させたことは当事者間に争いがないところ、右交際費が原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告に帰属すべきものであり、これをトリコラロイド社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当することは、原告において明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす。そうすると右金額も雑収入として計上すべきである。

(3) 右(1) 、(2) によれば、その合計額六四八七万六八四〇円を雑収入計上漏れとして所得金額に加算すべきである。

(三)  原告が昭和五六年一二月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額を二八〇三万〇八五六円として申告したことは当事者間に争いがなく、(二)の本件交際費の額及びトリコラロイド社の負担した交際費支出額の合計額六四八七万六八四〇円が原告に帰属することは二及び右(二)の(2) のとおりであって、措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額に当たるものと認められるところ、右交際費等の額の合計額九二九〇万七六九六円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五六年法律第一三号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は八三一〇万九〇七五円であるから、右金額を所得金額に加算すべきである。

(四)  右(二)の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(三)による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額六四八七万六八四〇円を所得金額から減算すべきである。

(五)  別表三の四のI(支出した寄付金額)、IIの1(所得金額仮計申告額)及び4(期末の資本等の金額)並びにIII の2(申告に係る損金不算入額)は当事者間に争いがないところ、(二)ないし(四)の加減算に伴って同表IIの2の金額(所得金額仮計加算額)を加算して昭和五六年一二月期の寄付金の損金不算入額を計算すると、同表のとおり、申告に係る損金不算入額が一五万〇七九九円過大となるから、右金額を所得金額から減算すべきである。

(六)  右(一)ないし(五)によれば、原告の昭和五六年一二月期の所得金額は、八五七二万六八一三円となる。

9  昭和五七年一二月期について

(一)  原告の申告所得金額(欠損金額)が別表二の九のIのとおりであることは当事者間に争いがない。

(二)(1)  原告が昭和五七年一二月期に本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた本件交際費の額一〇万円及び原告が本件船会社から得た資金を本件船会社名義の非居住者自由円預金口座に入金して、原告の帳簿を通すことなく右口座から直接引き出す方法により支出した本件交際費の額六五六〇万五七一一円が原告に帰属し、これを本件船会社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当することは二のとおりであるから、右各金額は雑収入として計上すべきである。

(2) 原告が昭和五七年一二月期に、その支出した交際費の金額のうち三六〇万円を、トリコラロイド社との間で締結した昭和五六年二月一日付け協約書に基づき、同社に対する立替金の名目で支出した上、同社に対する預り運賃の一部で相殺する処理をしてトリコラロイド社に負担させたことは当事者間に争いがないところ、右交際費が原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告に帰属すべきものであり、これをトリコラロイド社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当することは、原告において明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす。そうすると右金額も雑収入として計上すべきである。

(3) 右(1) 、(2) によれば、その合計額六九三〇万五七一一円を雑収入計上漏れとして所得金額に加算すべきである。

(三)  原告が昭和五七年一二月期に支出した措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額を一八八八万三六六四円、交際費等の損金不算入額を六九六万二八二四円として申告したことは当事者間に争いがなく、(二)の本件交際費の額及びトリコラロイド社の負担した交際費支出額の合計額六九三〇万五七一一円が原告に帰属することは二及び右(二)の(2) のとおりであって、措置法六二条四項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の額に当たるものと認められるところ、右交際費等の額の合計額八八一八万九三七五円に係る措置法六二条一項(ただし、昭和五七年法律第八号による改正前のもの)の交際費等の損金不算入額は七三三二万三九四八円であるから、右金額から申告に係る損金不算入額を差し引いた六六三六万一一二四円を所得金額に加算すべきである。

(四)  右(二)の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(三)による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額六九三〇万五七一一円を所得金額から減算すべきである。

(五)  後記のとおり昭和五六年一二月期更正は適法であるから、右更正に係る原告の昭和五六年一二月期の所得金額に対する地方税法七二条の二二所定の標準税率一〇〇分の一二の割合による事業税の額として算出される一〇二八万七一二〇円から原告の申告に係る事業税の額を控除した額を損金に算入すべきところ、弁論の全趣旨によれば、原告が昭和五六年一二月期の所得金額に対する事業税の額を三四万〇二〇〇円として申告したことが認められるから、右損金算入額は九九四万六九二〇円となり、被告の主張する昭和五七年一二月期の事業税の損金算入額九八〇万六〇四〇円は一四万〇八八〇円不足であることになる。しかしながら、原告が、昭和五九年一二月期の確定申告において、昭和五六年一二月期更正により増加した所得金額に対する事業税の額として、実際税率を適用して算出した一〇九一万六七四〇円を損金の額に算入するとともに、右九八〇万六〇四〇円を益金の額に算入し、その結果、右一四万〇八八〇円の損金算入不足額は消滅したこと、原告の昭和五七年一二月期から昭和六〇年一二月期までの各事業年度は多額の欠損金が生じていて、いずれにせよ、法人税、加算税が課されることがないことは当事者間に争いがない。しかして、法人税に係る所得の計算上損金に算入されるべき前事業年度の事業税の額が、前事業年度の法人税について申告、更正又は決定があったことにより、申告に係る事業税の額と異なることとなるべき場合においては、事業税についても申告納付制度が採用されていることからすれば、前事業年度の事業税の額のうちの右の異なることとなった部分は、本来は当該事業税についての申告、更正又は決定により税額が変更の上確定したときの事業年度の法人税に係る所得の計算において考慮すれば足りる性質のものであること、課税実務上は、事業税についての申告、更正又は決定による税額の確定を待たずに、とりあえず標準税率を用いて算出し直した前事業年度の事業税の額を損金算入し、後に、実際税率に基づく前事業年度の事業税の申告、更正又は決定による税額が確定したときの事業年度において、これによる過不足額を精算することとしており(法人税基本通達九-五-一参照)、この取扱いに従えば、右のとおり、事業税の損金算入額は昭和五七年一二月期についてみる限り、一四万〇八八〇円不足することになるが、右の取扱いの下における前事業年度の事業税の損金算入額も後の事業年度において確定した事業税額により精算されるいわば概算によるものであり、右のとおり、原告の昭和五七年一二月期の法人税の計算上、損金算入不足となった額が、昭和五九年一二月期に標準税率と実際税率との適用の相違に伴う過不足額の精算と併せ精算されており、かつ、昭和五七年一二月期の事業税の損金算入不足により、原告に何らの不利益も生じておらず、今後も不利益が生ずることは無いものと認められるから、昭和五七年一二月期における事業税の損金算入の不足は、これを瑕疵といい得るとしても、原告の法律上の利益に関わらないものとして、昭和五七年一二月期更正の違法理由として取り上げることを要しないものというべきである。したがって、昭和五七年一二月期の所得金額から減算すべき事業税の損金算入額は、被告主張の九八〇万六〇四〇円としたままで差し支えない。

(六)  右(一)ないし(五)によれば、原告の昭和五七年一二月期の所得金額は、九一五二万〇八八二円の欠損金額となる。

10  昭和五八年一二月期について

(一)  原告の申告所得金額(欠損金額)が別表二の一〇のIのとおりであることは当事者間に争いがない。

(二)(1)  原告が昭和五八年一二月期に本件船会社に対する立替金の名目で支出した上、本件船会社に対する預り運賃の一部と相殺する処理をして本件船会社に負担させた本件交際費の額三万三〇〇〇円及び原告が本件船会社から得た資金を本件船会社名義の非居住者自由円預金口座に入金して、原告の帳簿を通すことなく右口座から直接引き出す方法により支出した本件交際費の額五六四八万九三二六円が原告に帰属し、これを本件船会社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当することは二のとおりであるから、右各金額は雑収入として計上すべきである。

(2) 原告が昭和五八年一二月期に、その支出した交際費の金額のうち六〇〇万円を、トリコラロイド社との間で締結した昭和五六年二月一日付け協約書に基づき、同社に対する立替金の名目で支出した上、同社に対する預り運賃の一部で相殺する処理をしてトリコラロイド社に負担させたことは当事者間に争いがないところ、右交際費が原告自らの業務に関連して支出されたものであって、原告に帰属すべきものであり、これをトリコラロイド社が負担したことは原告に対し経費補助をしたことに相当することは、原告において明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす。そうすると右金額も雑収入として計上すべきである。

(3) 右(1) 、(2) によれば、その合計額六二五二万二三二六円を雑収入計上漏れとして所得金額に加算すべきである。

(三)  原告が右事業年度に支出した措置法六二条三項の交際費等の額(損金不算入額)を一九六三万三三〇三円として申告したことは当事者間に争いがなく、(二)の本件交際費の額及びトリコラロイド社の負担した交際費支出額の合計額六二五二万二三二六円が原告に帰属することは二及び右(二)の(2) のとおりであって、措置法六二条三項の交際費等の額に当たるものと認められるところ、右交際費等の額の合計額八二一五万五六二九円は措置法六二条一項(ただし、昭和六〇年法律第七号による改正前のもの)により損金に算入されないから、右金額から申告に係る損金不算入額を差し引いた六二五二万二三二六円を所得金額に加算すべきである。

(四)  右(二)の雑収入計上漏れに対応する支出金額は、交際費等として支出されているので、右(三)による交際費等の損金不算入額加算の処理の前提として損金認容の計算をすべきであるから、右支出金額六二五二万二三二六円を所得金額から減算すべきである。

(五)  右(一)ないし(四)によれば、原告の昭和五八年一二月期の所得金額は、二億〇五一二万五九八三円の欠損金額となる。

四  以上によれば、

1  原告の昭和五〇年九月期の所得金額一億六二五四万六八二五円は、昭和五〇年九月期更正に係る所得金額と同額であるから、右更正は適法である。また、国税通則法六五条一項に則り、右更正に基づいて納付すべき法人税額一八二九万二〇〇〇円(昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)に一〇〇分の五を乗じて得た額である九一万四六〇〇円の過少申告加算税を賦課した昭和五〇年九月期賦課決定も適法である。

2  原告の昭和五一年九月期の所得金額三四〇六万六四一七円は、昭和五一年九月期更正に係る所得金額と同額であるから、右更正は適法である。また、国税通則法六五条一項に則り、右更正に基づいて納付すべき法人税額一二七八万六〇〇〇円(昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)に一〇〇分の五を乗じて得た額である六三万九三〇〇円の過少申告加算税を賦課した昭和五一年九月期賦課決定も適法である。

3  原告の昭和五二年九月期の所得金額一六二万一八一〇円は、昭和五二年九月期更正に係る所得金額と同額であるから、右更正は適法である。また、国税通則法六五条一項に則り、右更正に基づいて納付すべき法人税額四五万三〇〇〇円(昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)に一〇〇分の五を乗じて得た額である二万二六〇〇円(昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法一一九条四項により一〇〇円未満の端数切捨て)の過少申告加算税を賦課した昭和五二年九月期賦課決定も適法である。

4  原告の昭和五三年九月期の所得金額六八三万二七二五円は、昭和五三年九月期更正に係る所得金額と同額であるから、右更正は適法である。また、国税通則法六五条一項に則り、右更正に基づいて納付すべき法人税額一九一万二〇〇〇円(昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)に一〇〇分の五を乗じて得た額である九万五六〇〇円の過少申告加算税を賦課した昭和五三年九月期賦課決定も適法である。

5  原告の昭和五三年一二月期の欠損金額一七五六万三九七九円は、昭和五三年一二月期更正に係る欠損金額と同額であるから、右更正は適法である。

6  原告の昭和五四年一二月期の欠損金額六七六九万六〇三一円は、昭和五四年一二月期更正に係る欠損金額と同額であるから、右更正は適法である。

7  原告の昭和五五年一二月期の所得金額六六五四万七八二二円は、昭和五五年一二月期更正に係る所得金額と同額であるから、右更正は適法である。また、国税通則法六五条一項に則り、右更正に基づいて納付すべき法人税額二五七七万八〇〇〇円(昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)に一〇〇分の五を乗じて得た額である一二八万八九〇〇円の過少申告加算税を賦課した昭和五五年一二月期賦課決定も適法である。

8  原告の昭和五六年一二月期の所得金額八五七二万六八一三円は、昭和五六年一二月期更正に係る所得金額と同額であるから、右更正は適法である。また、国税通則法六五条一項に則り、右更正に基づいて納付すべき法人税額三四二一万円(同法一一八条三項により一万円未満の端数切捨て)に一〇〇分の五を乗じて得た額である一七一万〇五〇〇円の過少申告加算税を賦課した昭和五六年一二月期賦課決定も適法である。

9  原告の昭和五七年一二月期の欠損金額九一五二万〇八八二円は、昭和五七年一二月期更正に係る欠損金額と同額であるから、右更正は適法である。

10  原告の昭和五八年一二月期の欠損金額二億〇五一二万五九八三円は、昭和五八年一二月期更正に係る欠損金額と同額であるから、右更正は適法である。

五  よって、原告の本件各請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鈴木康之 裁判官 石原直樹 裁判官 青野洋士は転官につき、署名捺印することができない。裁判長裁判官 鈴木康之)

別紙〈省略〉

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